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…escape ページ8

志保の行動は早かった。それだけ姉の存在は彼女にとって大きかったのだろう。

 ジンが試薬を持ち出すのみならず、組織は姉との約束を違えて姉を葬り去ったのだから、彼女の行動にも納得せざるを得ないが…。

 ARTX4869の制作を中断して、組織に対して反抗の意思を示した彼女は、今頃あの薄暗いガス室に放り込まれているようだ。
 あくまで聞いた話だが。

 不服ではあるが、今回も私はノータッチの指令が出ている。
 少々仲が良くなりすぎた自覚はあれど、ここまでされる言われはないのだが仕方がない。


 志保とはあの日からコミュニケーションを一切していないので、薬のデータの持ち出しなどもできていない。
 ハッキングしようにも今頃データは他ならぬ志保の手で消されてしまっているだろう。

 今後のことは考えていないだろうな。姉と同じところに逝きたがっているようだし。

 データがなんでないんだ!って言われても、ノータッチって言ったのはそっちだって言ってやるつもりである。
 ある程度の反抗声明は許してほしいね。


「聞いてる?A。」

「ごめんなさいベル。ちょっと考え事してて…。」

「一体何を考えていたのかしらね。」


 今はベルモットとショッピング中である。
 ちなみに__


「ぜひ、僕にも教えてください!」


 探り屋バーボンも同伴である。
 数年前に情報屋志望とか言ったのは、私を探るためだったとかなんだとか…末恐ろしい男である。


「いや、悔しいなって思って。」

「…一体何が…??」


 二人して全力で頭を回しているようだが対して重大なものではない。
 その美貌だ。


「あなたたち二人は美形だからいいじゃない。
 どうやったらそんなに整った容姿になれるのか、って考えてたのよ。」


 思ってもいない発言に驚いたのか二人揃って目を瞬く。
 くっそ驚いていても美人だな。


「安室さんもベルも、海外の血が混じってるっていうのは置いといて羨ましい見た目だから…」


 外では安室透で通しているバーボン。大人気女優の娘の顔をもつベルモットに投げかける。
 まだ安室さんはポアロには勤めていないけど。どうやら偽名は最初からあったようだ。

 そういう私も清原Aを名乗っている。


「そうは言ってもあなたはすでに美人じゃない。何を言っているの?」

「そうですね、素顔を一回拝見しましたけど。綺麗な顔立ちだったかと…」


 …??
 この二人は何を言っているんだろうか。

…◇→←…◇



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作者名:小波優凛 | 作成日時:2023年3月22日 19時

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