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意味がわからない、この一言に尽きる。
ガヤガヤと賑わう居酒屋の中で、Aは気配を殺しながら水を飲んでいた。
机に所狭しと並んでいるのは、ビールジョッキやいろとりどりの料理。
本来なら遠慮しつつもいただいているはずなのだが、こんな状況で食欲が湧くわけもない。
一課の皆様とならまだしも、なぜ交通課や爆処の面々もいるのか。
佐藤刑事と高木刑事は仲良く並んで座っている。
私の横にはなぜか松田刑事…そしてその横に伊達刑事。
少し視線を外せば佐藤刑事の同期である交通課の人と警備部の人。
それはまだしも、なぜ私までここにいるのか…。
半ば強制的に佐藤刑事に引きずられてきたのだが__
「A、食わねーのか?」
「ご心配なく。」
「清原、遠慮しなくていいんだぞ?」
「陣平ちゃんがいってたAちゃんって、この子?」
気づけば私の周りは、良くも悪くも一方的に知っている人も含めた知り合いで固められている。
各々盛り上がっているが、隙を見て逃げることはできなさそうだ。
「清原Aです、初めまして。萩原研二さんですよね。」
「俺のこと知ってるの!?
陣平ちゃんからAちゃんのことは聞いてたからある程度知ってるよ〜。よろしくね!」
「萩!余計なこと言うんじゃねぇ!」
軽く挨拶を交わすと、幼馴染がツッコミに飛んできた。知ってはいたけど仲良いな。
微笑ましく見ているとこちらに話を振られた。
「陣平ちゃんこんなんだから大変でしょ?」
「いえ、逆に私がお世話になってますよ。
萩原さんも知っている通り私は、警察官ではないので。」
そう言うと、きょとんとした顔をされる。
松田刑事は顔を顰めていた。
「そっかー…陣平ちゃん人の面倒見れたんだね!成長しているようで俺嬉しいよ」
「俺のことなんだと思ってんだ!」
これは私がいった後半の言葉が悪かったな、余計なこと言わないようにしないと…。
空気を悪くしたいわけじゃないからな。
それから萩原さんは少し喋って交通課の人々のところへ。
話していて楽しい人だったな。
彼が生きてて良かった、彼の知り合いの笑顔が守れて良かったと心から思う。
しっかりと防護服はちゃんと着て欲しいものだ。
「…腹減ってねーんか?」
「お気になさらず!食べてますって!
お金も出すんですから食べないと勿体無いですし。」
「そうかよ」
彼女の綺麗な食器を松田は無言で見ていた。
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作者名:小波優凛 | 作成日時:2023年3月22日 19時