…◇ ページ23
「お〜怖い怖い。」
いちいち癪に触るが、私は下手に目の前のこいつをしばき倒すこともできない。
その様子が気に入ったのかニタニタと笑う男…。
__こいつ、吊し上げてやる…！豚箱で一生後悔するといいわ！
だが状況は一切変わっていない。
ここで下手に出ても、何を要求されることやら…。
「私は警察と親睦を深めた覚えも、結託した覚えもないんだけど？」
「うるせぇ！
疑惑が上がってる時点で意味ねぇんだよ！！」
「何が要求よ。」
その言葉を待っていましたと言わんばかりの顔。
こいつ…下衆なことしか考えてないわね、下心丸見えだわ。
今度から現地出張の時は男装しよう、と決意したのだった。
「俺たちの要求は一つ。
組織の情報を吐くこと」
「組織？
一体どの組織のこと？仕事柄色んな組織とか変わるからわかんないわ。」
おそらくこいつらはうちの組織…黒の組織について、なにか知りたいようだった。
警察との交渉材料にするかもしれないが、一般の警察では話が通るはずもない。
「しらばっくれるな！わかってんだよ…
お前があの酒と黒が好きな組織と関わりがあるってことくらい…」
「サツと関わりがあるって言ってみたり、警察嫌いな例の組織とか変わりがあるって言ってみたり、大変ね？」
くっそまずいな…。
こんなところを通りかかる人もいるはずがない。
なにか…何か起これば、隙をついて走り出すって言うのに。
「まぁいい、言うつもりがなくても言わせるだけだ…。」
「組織の情報を得てどうするつもりか知らないけど…
私は大したこと知らないし、下っ端から得られる情報も少ない。
意味ないよ。無駄なことする必要ないんじゃない？」
そろそろ逃げないと。グレイとしての仕事はまだ残ってるって言うのに…。
途端、小柄な黒い影が現れた。
思わずそちらに全員が目を向ける。
小さな影は小さくミャァ、と鳴いた。
猫だ…！
全員の意識がそちらに向いた今、撃たれる可能性はあるが逃げ出せる！
足に力を入れて走り出した。
砂で靴裏が滑るが気にしてられない！
廃墟の中で月明かりだけを頼りに出口へ走る。
行動に出ればこっちのものだ。
後ろから逃げたぞ！などと声がする。
久々に全力で走るのでこの後が怖いが火事場の馬鹿力とでも言おうか、今までにないスピードで駆け抜けた。
目指すは人通りの多い場所！！
そこに行ってさえすればこのレースは私の勝ちだ!
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作者名：小波優凛 | 作成日時：2023年3月22日 19時
