…likely ページ14
あの手は、彼女のものに間違いない。
よほどの理由がない限り、彼女は手に細工をする変装をしない。
ましてやPCを触る状況で…。
でもどうして捜査一課に…?素顔ではなかったから変装していると思うけれど…。
「___ら!」
でも彼女は自分で言っていた。これを見越していたの…?
自分は手先をいつも通りに使えないと困るから、って…。
「…灰原!」
「あ、江戸川くん…。」
「大丈夫か?」
大丈夫か、と口では聞いているくせにその言い方は「Aさんは組織の人間か。」と聞いている。
彼に伝えるべきか否かまだわからないが…。
でも、私の考えを伝えるだけであれば問題はないだろう。彼女は、私たちの敵ではない、と。
なんせ、江戸川コナンが工藤新一だとバレそうな証拠データは、彼女が写らないようにしていたし、私の逃げた先でうっかり写っているであろうカメラの映像も改ざんしているだろうから…。
彼女であれば近隣の防犯カメラでさえもハックしてしまうもの。
「往来のある場所でする話でも、この子達が聞いていい話でもないわ。」
その一言だけで察してくれたのか、それ以上この場で聞かれることはなかった。
私が手だけでわかったのは彼女の手を至近距離でよく見る環境にいたから、普通ならわからないはず。
彼女ネイルもしないからベルモットでさえも、手を間近で見ることはないだろう。
むしろ人に見せようとしていないのではないか。
…!もしかして彼女…いや、憶測に過ぎない。
思考に耽りながら雲ひとつない青い空の下を歩く。
ほんの少し前なら見ることの少なかった空。
「灰原さんはどう思う!?」
「えっと…?
ごめんなさい、聞いてなかったわ。」
「Aさんについてですよ!
すごく美人でしたけど…」
急に話を振られたかと思ったら、彼女についてだった。しっかり聞いていなかった私が悪いが、ちょっと何を言いたいのかわからない。
「Aねーちゃんは俺たちの活躍を見てないからあんなことが言えんだぞ!」
「でもAさんの言うことは間違ってねーぜ。」
「そうね、大きくなったらいいって言ってたじゃない。
高校生探偵もいるくらいだし、それくらいなら…ね?」
チラリと江戸川くんを見るとギョッとした表情を浮かべる。やはり彼は面白い、さすがと言うべきだろう。
彼はすぐに表情を戻した。
「本来ならしこたま怒られることだぜ。
現場を出入りすること自体、な。」
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作者名:小波優凛 | 作成日時:2023年3月22日 19時