覚えてる。（JW緑） (ページ15)

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Aside

「…大丈夫です。なんか、懐かしい香り、でもどこでいつ嗅いだか覚えてない香りってあるじゃないですか。

そんな感じ…」

きっと接客のとき、シャンプー台で髪を濡らしたときの神山さんの匂いを嗅いでいたから懐かしいのかな。

…でもなんか、不思議とそのシチュエーションは頭に浮かばない。

……思い出せない。けど懐かしい。

鼻をすすりながらも、じっと私を見る神山さん。

「…気のせいかな」

ごまかすように笑って見せると、緊張の糸が切れたかのように、ふーっと息を吐いた神山さんだった。

すると、お昼ご飯が運ばれてきた。

看護師「Aさーん？お昼ご飯でーす」

神山さんは慌てて顔をティッシュで拭いて、立ち上がった。

そして外で待っててくれてたお母さんも入ってきた。

「わぁー、お水たっぷりのおかゆ…。笑」

空っぽの胃の患者のことを考えてるとはいえ、こんなの絶対美味しくなさそう。

お漬物も何もないし、本当に真っ白なおかゆ。

神山さんはお皿を覗き込んで苦笑いをした。

神「最初やからね、しゃあないね。」

そう言いながらパイプ椅子を寄せて座って、

彼はお皿とスプーンを手にした。

「えっ、」

神「あー、けっこう熱々やな。」

スプーンでおかゆを混ぜながらふーふーして冷ましてくれている。

神「はい、あーん？」

母「ふふふ…」

「え、ちょっと…恥ずかしいので、自分でやります」

神「でも、利き手ケガしてるやん」

「スプーンくらいなら左でも」

神「うーん、そ？じゃあ、はい」

少し寂しげな表情でお皿を置いてスプーンを渡してくれた。