覚えてる。（JW緑） (ページ14)

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Aside

神山さんが突然、膝から崩れ落ちるように泣き出した。

折れて不自由になった右手は伸ばせなくて

左手を必死で、ベッドの右側のスペースにいる神山さんに伸ばす。

お母さんも泣きそうな顔をしている。

でも、神山さんこんなに泣いてるし…

「お母さんごめん、ちょっと2人で話してもいい？」

そう言って部屋から一度出てもらった。

「神山さん…どうしたんですか…」

顔を伏せたまま泣いてるから、もう一度呼んでみる。

「神山さんっ」

たくさんの涙の筋をつくって泣く顔がやっと私を見てくれた。

私の伸ばした手に気付いてハッとしたような表情で、床に膝立ちのまま私の手を握ってくれた。

ベッドテーブルにあったティッシュを1枚取って、私は神山さんの顔を拭いた。

でも、涙は止まるどころかさらにとめどなく溢れてきて。

一度ティッシュで拭くのを諦めて、神山さんの頭を撫でた。

神山さんの髪、しょっちゅう染めてるから傷んでるなぁ、

早く私が仕事復帰してヘッドマッサージとトリートメントしてあげたいなぁ。

そんなことを目を細めて思っていると、

神「ちょっとだけ、くっついても、ええすか…」

しゃくり上げながらそう聞こえて、

私は、ベッドに腰掛けた神山さんの頭を左手だけで胸元に引き寄せた。

そしたら、また声をあげて泣き出してしまった。

その瞬間、

「あ………」

神山さんの、髪からかすかに香る彼のシャンプーと彼だけの持つ香りが混ざって私の鼻をかすめた。

さっきよりも辛くないけどまた少し頭が痛む。

「んん……」

神「Aっ、さん、？どうした？また痛い？？」

彼はさっきまでの涙をピタッと止めて、私の顔を覗き込んだ。

チラッと見たその顔は、さっきとは打って変わって驚くほど男らしく頼もしく、それでいて優しい表情だった。