覚えてる。（JW緑） (ページ12)

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神山side

点滴で鎮痛剤を入れてくれたからもう落ち着いたみたい。

「神山さん……」

さっき、ついうっかり呼び捨てしてもうたけど。

何か言いかけたところで先生がやってきた。

先生「異常は特にありませんでした。最近の記憶があまりないことについても、MRIで画像には映らないほどのものすごく小さな損傷程度です。

なので、まぁ寝過ぎると頭痛くなったりするのと同じような感じと思ってね。

あとは、その失くした記憶を戻すような作業をするときに頭痛が起きる人もいるから、今後も度々頭痛はあるかもね。

同じ体勢でいたからきっと体のあちこち痛かったり、体も動かしづらかったり最初はするだけろうけど、徐々に普通に戻っていきますよ」

Aは何か思い出そうとしたんやろか。それとももうすでに何か思い出したんやろか。

看護師さんが去り際に、もうすぐお昼ご飯ですからね、と微笑んで伝えていった。

少しボーッとした表情のAが、遠くを見つめたままぼんやりとつぶやく。

「私……何か大切なことを忘れてる気がするんです」

心臓がドクンと脈打つ。

敬語やから、明らかに同じ空間にいるお母さんに言うてるんやないってわかる。

「…ってこんなこと唐突に神山さんに言っても困らせちゃいますよね。笑

お客さんだからただの1人の店員のことなんてそんなに知るわけないのに、いきなり神山さんに聞いちゃって、

なんか私、記憶なくしたこと意外と焦っちゃってますね。笑」

俺は首を横に振った。

ただの1人の店員のこと知るわけないなんて、ほんまに傷付く。あかん、胸がめっちゃ痛いし

目にじんわり涙が滲む。