【ｄ！】全ては作家の手の中に。 (ページ5)

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とページ5

＿＿No-side

カリカリと紙に物語を綴る音だけが静かな室内に響く
万年筆片手に、思い通りの世界を原稿用紙上に創る

物語は、作家のAがゾムを従え、恍惚の表情を浮かべているところまで書かれていた
Aの心理描写が細かく書き綴られたその紙を
心底嬉しそうに愉しそうに、愛しそうに見つめるのは＿

＿＿＿エーミール。
色素の薄い髪と瞳を持つこの男は、Aの愛した｢主役は我々だ！｣のメンバーである
その男は、自分が書いたAの物語を
にんまりと顔を快楽に歪めながら、ぽつりぽつりと呟き始めた

｢Aさん。私を愛してくれて有難う御座います
だから、私も、貴女を愛することを決意しました＿＿

＿＿なんて、ことはありません。
Aさん、私は貴女が思うよりずうっと穢くてAさんを愛している愚者です。
Aさんは私達をコンピュータの中でツクリアゲ、それを発信しましたよね？だから、私はお返しに貴女を貴女の理想の世界に閉じ込めてあげました。

大丈夫です。貴女と違って、私は発信しません
俺だけが貴女を見られます
たがら、永遠に俺と一緒やで

お望み通り、貴女を｢設定｣することも出来るんやけど…俺はありのままの貴女が好きやから、許してな？｣

Aは今日も小説の中に生きる。
永遠に続く、その｢物語(セカイ)｣が、ツクリモノだとAが気づくのはいつになるのだろうか
もしかしたら、エーミールが現実世界で一緒に居たいという結論に至れば、現実世界で閉じ込めた方が、自分を認識させられると思えば解放されるかもしれない

しかし
エーミールが｢永遠に生きる自分だけの所有物｣であるAを
まるで蝶の標本の様に見ていたいのであれば
Aは永遠(トワ)をそこで過ごすのだろう。

Aも愛する人の永遠になれたのなら
それはそれで良いのかもしれない
しかし彼女の望んだ｢自分｣と｢愛しい配下｣は手に入れられない

また明日も、Aは小説の中でツクラレタ物語を進める

愛しい人によって
無理矢理にでも物語は綴られる。

自分が最も穢く下衆で、彼らを愛していると思っている彼女は、自分よりも穢く下衆で、貴女を閉じ込める程に愛している
壊れた愛しい人の永遠となった。

…＿＿続いてのニュースです
大人気作家の詠梦 Aさんが昨日未明、行方不明となりました
詠梦さんの部屋には、｢えいえん｣と書かれた原稿用紙が堕ちており…

＿＿さて、今日も物語(愛)を綴りましょう。