39話〜企み〜 ページ40
『あ、かばねくん…？！え、なんで』
隼「タイミングいいな」
業「通話繋げて全部俺に聞かせてたくせによく言うよ」
通話繋げてたって、いつから…？
そもそもなんで赤羽くんに聞かせたの？
でもそんな質問を投げかけられるような雰囲気ではなかった。
2人の空気が何時もより少し張り詰めていたから。
業「ねぇ、隼人。最近焦りすぎじゃない？」
隼「生憎、時間が無いんでね」
業「こっちにも色々あるんだけど」
隼「それで手遅れにならなきゃいいけどな」
馬鹿にするように鼻で笑った隼人はそのまま綺麗な動作でコーヒーを飲んでいた。
2人の言ってることが分からない。
焦りだとか、手遅れだとか。
気持ち悪い、考えることが多すぎて。
頭の中がスッキリしない。
業「とりあえず俺をここに呼んだってことはAちゃんのこと借りていいんでしょ？」
そう言って彼は私の手を引いて私を店から連れ出した。
その光景を隼人は何も言わずにただコーヒーを飲んで眺めているだけだった。
＊＊＊
店から連れ出されて辿り着いたのは子供たちが遊ぶような小さな公園。
『赤羽くん、待ってっ。赤羽くんっ』
腕を引かれて進むスピードが少し早くて彼の名前を呼ぶ。
そうすればすぐにハッとして立ち止まってくれた。
業「ごめん、大丈夫？」
『……うん』
掴まれた手首が離されて熱が引いていく。
それが少し寂しいと思った。
『どこから、聞いてたの……？』
業「今俺に告白されたらってとこから」
だいぶ序盤じゃない。
こんなことを聞いて、私は何がしたいのだろう。
誤魔化したりでもしたかったのだろうか。
何を話せばいいのか分からなくて言葉が詰まる。
少しきまずい沈黙の中次に口を開いたのは赤羽くんだった。
業「……さっきの隼人の質問、俺も気になるんだけど」
『……え』
業「E組の中で誰が1番好きかってやつ」
『………』
業「俺が当ててあげようか」
そういうと彼は不敵な笑みを浮かべて近づいてくる。
業「あの時、Aちゃんの中で1人思い当たる人がいたでしょ」
『っ、まって……』
業「でも口にしなかったのはそれが恋愛感情なのか友達としてなのか分からなかったから」
『ちかいっ』
ジリジリと1歩、また1歩と距離を詰められる。
それに合わせて私も下がるけれど、それはすぐに後ろにあったベンチによって阻まれた。
体制を崩してベンチに腰かけてしまえばもう逃げられない。
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作者名：湯のみ | 作成日時：2021年10月11日 7時
