34話〜鷹岡の時間��〜 ページ35
隼人side
最初から不気味だった。
父ちゃんだと笑う姿も、人を良さそうに見せる喋り方も。
帰宅後調べてみれば思った通りの情報。
恐怖を植え付けていく教育。
次の日の訓練は想像を絶するもので、こんなのすぐに潰れてしまうと思った。
倉橋さんを庇って鷹岡に向かっていった時はどうしようかと思ったけど、烏間先生のおかげで間一髪Aは無事だった。
安心したのは束の間、鷹岡の鞄から取り出されたナイフが地面に刺さる。
まだ地面に座り込むAは苦しそうに短い呼吸を繰り返していた。
やばい、早くこの光景をアイツの視界から消さないと。
『……っ、はや』
消え入りそうな細い声。それでも確かに俺には届いて、咄嗟に自分の掌で彼女の視界を遮った。
隼「大丈夫、ゆっくり、息吐いて…………吸って……」
間に合った、か？
烏「隼人くん、Aさんは……」
隼「……大丈夫です、とりあえず教室運んでくるので進めててください」
それだけ伝えて彼女を抱き上げ校舎へ向かった。
保健室のベッドへ寝かせ再び外へ出れば渚くんが鷹岡にナイフを当てているところ。
隼「やばそうなら俺が行こうとしたが……すげぇな、渚くん」
てか、あそこにいるの浅野理事長じゃね？
相変わらず貫禄やばいなぁ。なんか鷹岡の口の中に突っ込んでね？
隼「……鷹岡さん」
逃げ出すように走ってこっちへ向かう鷹岡を呼び止める。
隼「……次会った時は俺と殺ってください。ちょっと借りあるんで」
笑ってそういえば何も言わずに去ってしまった。
理「一ノ瀬隼人くん」
げっ、理事長……。俺この人苦手なんだよなぁ。
隼「お久しぶりです、浅野理事長」
理「妹さんは元気かな？」
隼「えぇ、お陰様で。浅野理事長もお変わりないようで何よりです」
この人前からやけにAに執着してくんだよなぁ。
腹の探り合いにも似たドス黒い会話。
こんなのここのヤツらには見せらんねぇよな。
早く切り上げようと「俺はこれで」と軽く挨拶をして皆のいる元へ向かった。
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作者名：湯のみ | 作成日時：2021年10月11日 7時
