いつか、いなくなる日がくるのなら【赤羽業】 (ページ29)

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28話〜境界線〜ページ29

それからは全てがあっという間で、東京に引越して転入のためのテストを本校舎で受けた。

私が校舎へ行ったのはその1度きり。その他の手続きは全て隼人がしてくれて、テストを受けた数日後には入学許可証が渡された。

1度任せっきりなのが申し訳なくて私も着いていくと言ったのだけど「んー、荷解きしてて？」と一蹴されてしまった。

隼人と数ヶ月過ごしてみても私たちの距離感は他人と似たもののまま。

彼はいつだって明確な線引きをする。
踏み込んでいい場所とそうでない場所。

その線を超えた時、多分私はここにいられなくなる。

元の一ノ瀬Aの居場所を、積み上げてきたものを壊してしまう。

だから。

新しい友達なんて作らない。

誰の記憶にも残らないように、"私"なんて最初からなかったものになるように。

"私"のまま人生を終えることになってしまったとしても独りでいい。

私だけ幸せになっては駄目。

彼が幸せになれた時すぐに消えれるように、これ以上重荷にならないように。

一ノ瀬隼人の人生を狂わせてしまった償いとして、私はずっと独りでいる。

だから、もう誰も私に踏み込んでこないで。