19話〜思い立ったが〜 ページ20
次の日、いつももより遅く下に行くともう赤羽くんは帰ってしまったあとで。
隼人だけがソファーでテレビを見ながらお茶を飲んでいた。
『……おはよう…って時間でもないけど』
隼「はよ」
『赤羽くん、何か言ってた？』
隼「いや、何も」
『……そう』
部屋に響くのはお昼のバラエティ番組から流れる楽しそうな笑い声。
特に意味もなく流れるそれをぼーっと見つめる。
逃げたこと謝らないとな…。
それから私じゃ赤羽くんとは付き合えないって事も言わないと。
隼「……お前は自分の事を話さなすぎな。んで、お互いのことを知らなさすぎ」
なんの脈絡もなく言われた言葉にびっくりする。
その言葉を発した本人の目線はテレビに向けられたまま。
隼「思ってる事全部ぶち撒けばいいんじゃねえの？」
『思ってること……』
隼「そう。つーことで、はい」
そう言ってて渡されたのは赤羽くんの名前が表示された通話画面のスマホ。
『えっ、なっなにこれ！』
隼「何ってスマホ」
いやっ、それは分かるけど！
『そうじゃなくてっ！』
隼「ほら、思い立ったが吉日っていうだろ？」
っ、またこいつはっ……。こっちにもタイミングってものがっ！
そうこうしているうちに呼び出し画面は通話画面へと切り替わる。
【もしもし？隼人？】
少し遠くで聴こえる赤羽くんの声。
【おーい、隼人ー？………………A、ちゃん？】
『あ、赤羽くん……？』
【うん、どうかした？】
『えっと、あの……』
頭が真っ白になって、何を話せたらいいか分からない。助けを求めるように隼人を見るけれど、顎で指示されるだけだった。
『そのっ……こ、この後なにか予定ありますかっ』
なんで敬語……。そもそも顔も見たくないかもしれないじゃん！だって告白に何も言わず逃げた女だよ！？
誰が見たいの、そんな奴の顔……。
【特に何も無いけど？】
『話したいことがあって、✕✕公園まで来れないかな……？』
【……わかった】
プツリと切れる電話に小さく息を吐いて『行ってきます』と家を出た。
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作者名：湯のみ | 作成日時：2021年10月11日 7時
