国の犬。 ページ2
「あんた誰?」
それも女だ。始めてみる顔。
「警視庁の宮小路Aです。最近ここに赴任してきてねあ、あんま警戒とかしないでね。えっとね、さっき佐野くんの家に巡回連絡で行ってね。おじい様から君のこと沢山聞いてね。それで特徴が一緒だったから声かけさせてもらっただけ。」
女は一通り自分の自己紹介を話し、笑顔になる。
柔和な優しい笑顔。誰かを思い出させる。
「ふーん。それで?俺忙しいんだけど。」
「まぁ、特に言うこともないんだけどさ。」
そいつは俺の側まで来て、耳元でそっと囁いた。
「あんまし、悪さしてると捕まえるからね。」
手錠のカチャリと言う音が聞こえた。音の方を見ると、女は左手で手錠を弄んでいる。
大人しく見えたが、大人しい訳では無いらしい。
どちらかと言うと凶暴。
流石は国の犬だ。
俺は女の目をじっと見つめる。
お互いの光のない赤と黒の瞳が交差する。
どちらも強き何かを持つ目。その強さが何かは言えないが。
「ふーん。面白いじゃん。捕まえれるもんなら捕まえてみなよ。」
口角を上げて、挑発げに笑う。
「そうだね。まぁ、精々頑張って活動してなよ。東京卍會の無敵のマイキー君。」
女は伏せ見がちな目で手錠を手際よく直した。
「とりあえず、あんまし仕事を増やさないでね。」
飄々とした様子で俺の横を通り過ぎる。
ほのかに香る、香水の匂い。
何か懐かしい感じがする。
女の後ろ姿を見ながら、俺は舌を出し挑発する。
「
あれ、なんて名前だったっけ?
まあ、いっか。
「あああ!!!!たい焼き冷めちゃったじゃん!!!!」
何故だか、あの女と話してて悪い気はしなかった。
だって
たい焼きを片手に家路を急ぐ。
目の前には橙色に染まる空。
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作者名:あまね | 作成日時:2022年8月4日 21時