雪解け水を。 ページ10
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｢寒いですね。｣
そう呟いた人の方を見ると鼻は真っ赤になっていた。サンタクロースか。お前は。いや、トナカイだったか？まぁ、どっちでもいい。
｢外に行きたいって言ったのはＬの方じゃん。｣
私は慣れない雪の中を、また慣れないヒールで歩いていた。こんなことならブーツで来ればよかった。
｢こんなに寒いなんて聞いてないです。｣
真っ赤な鼻を啜り、身を震わせいる。まぁ天気予報に騙されたな。
私の歩幅に合わせて歩くＬ。真っ白な世界に佇むＬはとても綺麗で、夢を見ているようだった。
私はポケットに入った手を出しながら降ってくる雪を掴む。子供時見た事をした。
｢A｣
彼が私の名前を呼んだ。目の前には握り拳が2つ。
『どうしたの？』
彼はマフラーに顔を埋めたまま言った。
｢この手のどちらかに貴方の欲しいものが入ってます。当てて下さい。｣
『待って。今？』
｢ええ、今です。絶対今じゃないと駄目です。｣
今？本当に今なの？私は不審に思いつつ左を選んだ。本当に良いのかと念押ししてくるが私はこっちがいいのだ。
彼の握り拳が開かれた。そこには何も入っていない。何だ外れかと思ったその刹那。私の手は彼の手と重なった。
｢ハズレです。｣
彼はそう言って恋人繋ぎをしてきた。嗚呼、そうか。そういう事か。私は笑った。
冷たい手が重なり合い温もりを帯びる。
『不器用め。』
私は小声で言った。本当に不器用だ。何かと言って、私に道路側を歩かせないし、暖かい飲み物を買ってくれたり、今だってそうだ。
本当は手を繋ぎたかったんでしょ？そう言えばいいのに。大方彼のことだからどっちも中は入ってなかったのだろう。ははーん。お見通し。
｢私は器用ですよ。｣
頬をふくらませた彼が言い放った。本当に器用なの？じゃあその赤い頬っぺたは何なの？私はニヤリと笑い、彼の手を取って走り出した。
少し先では太陽が顔を出した。
彼の右手がポケットの中で開かれた。
そこに指輪があったのはまだ知る余地もない。
1枚上手の貴方
File xxxxx。→←As a human being！！
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作者名：あまね | 作成日時：2021年11月10日 13時
