この朽ちた世界の果てに 【雪男】

エプロンをしたヒーロー ページ2

＊





｢ヒャッハー!! おりゃっ！｣


｢ぐがっっ｣



嬉声と共にグチャ___なんて、あまり聞きたくない気分を害するような音と共に顔に何かが当たる。


恐る恐る目を開ければ、



｢……ひっ、ひゃあああっ！｣



鉄パイプが人らしき男性の頭に突き刺さってる。


ピクッピクッと痙攣をしているおぞましい光景を見て、ガタガタと震えが止まらなくなった。




｢ねえ、大丈夫？｣

｢……はぁ、はっ……｣

｢ん〜、ちょっと落ち着こっか！｣


乱れる呼吸を整えようとする私の元へ、瓦礫の上からヒョイと飛び降りた男性がやって来る。




｢よしよーし。もう大丈夫だよ？ 怖いの居ないから安心して｣

｢……こ、怖いのって、｣


終始にこにこ笑顔の男性は某アニメショップのエプロンを付けていて、汚れていない方の手で頭を撫でてくれている。多分。



｢”化け物”さん。有名な言い方だと”ゾンビ”だけどね！にゃはっ｣


｢はあ、はあ、ゾ……ゾンビ…｣


どこが可笑しいのかな。


あ、頭が可笑しいのかしら？



それよりもやっぱり目の前の既に息を引き取ってるこの人は”ゾンビ”というやつなんだ。


妹が海外の某ゾンビ映画にハマってたっけ。



｢で、でもなんでそんな……｣



そうだよ！あれって空想の中の化け物でしょ！？

それがなんで現実に存在しているのよ。



｢なんでなんて俺っちも知らないでやんすよ。 それより、ずっとここにいると危ねぇから逃げた方がいいよ？｣


｢へ？逃げるって、｣


｢ほら騒ぎを聞きつけて集まってきた｣


彼が指さす方を見ると、なんかそれっぽいのがゆっくり迫って来ていた。



｢そ、そんなっ？ あ、｣


｢ん？ 逃げないの？｣


｢こ、腰が抜けた……｣


｢にゃはっ！マジでか！？ ｣



お腹を抱えた笑われるようなことしたかな？

あんな光景見せられて正気でいられる方がどうかしている。



｢うわっ！？｣


｢しゃーないから連れて行ったげる！ しっかり捕まってろよ！！｣


｢え、ええええええ！？｣




小柄な男性は難なく私を抱き上げて、背後に迫るゾンビを見向きもせず走り去った。





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