年に一度、人生に何度も［N HBD!!］ (ページ10)

今日:14 hit、昨日:0 hit、合計:32,876 hit

忘れんぼうな君へ３ページ10

私の誕生日。

和くんは仕事。

ほら、ね？見ててくれなかったでしょ？
どうせ、見ないの。口先だけ。

でも、好きなんだけどね。

ふうっと、2人分だけ買ったケーキのろうそくを消す。
誰もいない、きっと和くんは帰ってこない。

いっつもそうだもの。
帰ってくるわけがない。

ケーキをしょんぼり食べる。

誕生日おめでとう、わたし。

にーって笑ってみせる。
ケーキのクリームが少し、溶ける。

和くんは、本当に忘れんぼうなのね。

彼女とのデートを忘れて、
彼女の誕生日を忘れて、
いったい、どれだけ忘れれば気がすむのって。
問いてみたい。

食べたケーキを片付けて、部屋にある私の荷物をまとめる。

今日でもう終わり。
全ておしまい。

もう一個買ったケーキは置いていく。
私のせめてもの反抗。
ゆるしてね。

……なんてね。

荷物を持って外に出る。
低めのマンションからは、
見たことのない景色、
感じたことのない空気が。

見たことのない和くんの笑顔のとなりには、
見たことのない美人の女の子が。

幸せそう。

和くん、私は和くんが楽しそうで良かったよ。
いつも疲れたように帰ってきてたから、私の見えない外の世界は、そんなに疲れるものなのか確かめたかった。

私は和くんの笑顔の理由がわかったよ。

震えた携帯を見ては笑って、
「なんで笑ってるの？」
って聞いたら、

「忘れた」
って言う。

あの時間が幸せだったのにね。

私には、この世界が向いてないみたい。

だから、もう、やめる。

……和くん。

和くんって本当に忘れんぼうね。

私を好きだった気持ちも簡単に忘れちゃうなんて。

私は、外の世界に飛び立つよ。

……私のことも和くんはわすれちゃうのかな。