年に一度、人生に何度も［N HBD!!］ (ページ26)

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言葉の雫３ページ26

「俺の母校だからね」
「ああ、大学」
「そう。楽しんでね？」
「はい」
「俺の代わりになる人がいるんだろうな」

呟きに近い、嘆き。

先生の代わりはいないなんて、先生が一番知ってるはずだ。

「……」
「俺より詳しいから、教授は」
「…はい」
「いっぱい勉強になるよ」
「先生より詳しくなれるかな」
「Aだったらなれるよ」
「言霊ですね、うれしい」
「俺にそんな力あったらいいのにね」
「え？」
「この世の中全部自由自在、なんてね」
「なにそれー」

いつもみたいに、ふふふって笑って先生を見たら、
真顔で笑顔を引っ込める。

「Aもいつか恋人できて、結婚するんだね」
「…え？」
「どうしよう、おれ、笑えるかな」
「……」
「まず、結婚式に招待されないか！」
あはは、なんて笑ってるけど、目が笑ってない。

怖い？

いや、愛おしい。

「先生」
「なに？」
「私は、先生の言葉には力があると思ってます」
「言霊？」
「私を一喜一憂させちゃう力」
「…え？」

目を見ると、戸惑いの目をしていた。

好きです。

その四文字を言う前に、ぎゅう、と抱き締められた。

「…せんせ？」
「おれもAの言葉には力があると思うよ」
「……」
「いっつも一喜一憂させやがって、おれをどうするつもり？」
「……」
「好きだよ、結婚式呼んでね」
「違うでしょ、先生」
「え？」
「結婚式、一緒に出ましょうね」
「そうだった」

優しく口付ける。

先生の雫が、水に代わった瞬間。

干からびていた筈の、心が溺れた。