年に一度、人生に何度も［N HBD!!］ (ページ23)

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公私混同とは、するものだ３ページ23

「A、お前……」
「あの、本当に、内緒にしててごめんなさい！」
「いや、応援するっていうか、してるけど」
「ん？」
「じゃあ、この前、課長が言ってたのは……」
「翔さんダメ！」
「え？」

課長が櫻井さんの口を手で塞ぐ。
んー！んー！って櫻井さんが苦しそうにしてる。

「課長は……？」
「翔さん、言ったらクビ」
「は？なんで？」
櫻井さんが、力が弱まった課長の手を束ねておさえる。

「俺、可愛くて優しくてちょっと抜けてて家庭的でフワフワした彼女がいて……」
「わーわーわーわー！」

え？何それ？

「課長うるさい！静かに！」
「おい、A！何だその口の聞き方！」
「俺以外の人と話すのちょっと嫌なんだよねー、最近なんか同じ課の人と仲よさそうだし」
「櫻井！クビ！」
「え！それはやだ！でも、まさかAのことだったなんてー！」

わーわー、言っててうるさいのに、翔さんの言葉がしっかり聞こえてくる。不思議。

『可愛くて優しくてちょっと抜けてて家庭的でフワフワした彼女』

『俺以外の人と話すのちょっと嫌なんだよねー、最近なんか同じ課の人と仲よさそうだし』

露骨に照れて俯く。

「ね！A？…っておい！めっちゃ照れてる！」
「はあああああああ、櫻井何してくれてんの！」
「課長も耳真っ赤！」
「うるせえクビだ！」
「しないくせにー」

赤くなった頬を抑えて、嬉しさに耐える。
すると、
「A？」
と、二宮さんが顔を覗く。

「ね、公私混同してもいい？」
「……うん」
「……翔さんとあんまり仲良くすんなよ？」
「うん、だいすき」
「おれも」
「……」
「さ、仕事始めるよ！」

頭をポン、と優しく撫でて席に着く。
仕事始めるよ、と言っておきながら机に伏せちゃうところも。
その束縛すらも、愛おしい。

いつの間にか落ちていたあの写真を拾う。

「櫻井さん！」
「ん？」
「これどうぞ！」
「え、いらないの？」
「いらないです！」
「え！」
「河村さん、営業行きましょう！」
「ちょっと！A！」

うるさい櫻井さんを置いて、河村さんと一緒に営業に出る。

去り際に、課長と目が合う。

可愛くパチン、とウインクをした。