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キズ２ ページ15
あなたが残したいくつもの傷は、いなくなってから痛み始める。
「……ね、それどうしたの」
「あ、」
左手で、私の左手をちょっとぎこちなく取って言う。
自分が、怪我したかのように、悲しい顔するのが嬉しかった。
「ちょっと包丁で切っただけだよ」
「痛い？」
「ちょっと」
「本当は？」
「だいぶ、痛い」
「良かった」
ほっとした様子で、右手で傷を撫でる。
「…痛っ」
「あ、ごめん」
ふふふ、と笑って手をおろす。
「Aは無理するから」
「…そう？」
「うん」
「傷ついたことに気づいて。だから、傷は痛むんだよ」
その言葉が、今、やっと分かった。
あなたがいなくなって、心に傷が出来た。
もしかしたら、いなくなる前から違う傷はできてたかもしれない。
それを、やっと気づけた。
傷が痛んだことで、やっと気づいた。
これは、あなたからの最後の愛情？
『傷ついたことに、気づいて』
……その傷を作ったのはあなたじゃない。
あの時も、あなたがハンバーグが食べたいっていうから作ってた。
「あ、本当に作ってくれたんだ」
「あたりまえだよ」
「俺が食べたいって言ったから？……その傷も俺がつけたってことになる？」
「もちろん」
「そっか、治してあげないとね」
ほら、言ったでしょ？
私の傷が治るには、
あなたしかいないのよ。
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作者名：緩雨 | 作成日時：2017年6月12日 19時
