わたしの全部を、あなたに。［S］ (ページ8)

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7 崩れ落ちるページ8

うわ、いまの。
グサってきた、きっと後者に違いない。

また、メモに書いた。
なんて書くの？
学校でひとりで、家族から見捨てられてるって？
酷い人にもほどがある。

カバンにメモをしまって、書類を取り出した。
「じゃ、これが契約書。たとえ、両親が君に興味がなくてもこれだけは書いてもらってね？」
書類を机に置いて、頭をぽんぽんされた。
はずかしくて、首をくすめる。
酷いことに言われたのに照れてる私。

「じゃ、帰ります」
「ありがとうございました」
玄関のドアを開けて、送ろうと外へ出る。
櫻井先生が、忘れてた、というように振り返る。

「たまには、家に友達呼んだ方がいいよ？」
「…え？」
櫻井先生の顔から、笑顔が剥がれ落ちる。

「客、ましてやこれからお世話になる家庭教師が来たのに飲み物も出さない。知らないひとが来たのに君ひとりで対応する。しかも、家の中という密室空間で。アウェイだからって密室空間にいれちゃだめでしょ！あと、俺が隣に座るように誘導させると、迷いもなく隣に座る。……あ、でも。ドアガードはなかなかやるね。これは加点」
じわじわと、ドアに追い込まれる。

「少しは人を警戒するようにしたほうがいいよ？だらか、友達呼んで人への振る舞いや警戒の仕方に慣れたほうがいいんじゃない？って言おうと思ったけど、友達いないんだっけ？ざんねん」
どん、と壁に手を突かれて逃げ場がなくなる。

「頭撫でただけで首くすめちゃうの？もしかして、お前処女？」
「……」
「処女なんだ、わかりやす！」
キスされる！って距離まで顔が近づく。
ぎゅうって、目を閉じたら、はは！とまた笑い声がした。

「じゃ、また来ますね？朝霞Aさん」
ひらひら、と手を振ってその場をあとにする。
圧倒されて、がく、と膝から崩れ落ちた。