わたしの全部を、あなたに。［S］ (ページ41)

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40 秋の空ページ41

２人、エレベーターの中。
上がる音だけが聞こえてくる。
重い空気が漂ってるように見えるかもしれない。
いや、実際空気は重い。
でもね、今、私ちょっと嬉しいんだよ。

車に乗せられたときから、
先生と元カノらしき人と電話してるのを聞いたときから？
なんだか、気になる。
これが恋なのかは、分からない。

横暴で怖いのは変わらないし、今だって嬉しいの裏に疑ってる感情が隠れてるのはわかってる。
でも、本当に少し。

恋なのかな
知りたくないや

でも、ありえない話だとは思う。
こういう感情の中に、客観的に見てる私もいることが大袈裟だけど唯一の救いと言うか。
相葉くんのことが好きだったんでしょう、わたし。
なんでこんなにすぐ忘れられることができるのか。

……多分、多分だけど、その答えは知ってるよ。
憂愁なんてないんだもの。

エレベーターが開く音で、意識が戻った。
何でここに来たかまだ分からない。

さっき聞こうとした時、なんて言った？

「ね、誘拐した理由ききたい？」
「……もちろんです」
「あのね、お前もしかしたら、」

もしかしたら。
もしかしたら？

いつの間にか先生の家の中に入っていた。
靴を脱ぐ前に、口がモノを言う。

「あの、先生」
「ん？」
先に家の中に入ってた先生が振り向く。

「……殺されるんですか？」

先生が、靴脱げば？とぶっきらぼうに言った。