わたしの全部を、あなたに。［S］ (ページ38)

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37 糸切りページ38

そのまま、じぃっと私を見つめる。
私の方が先に耐えられなくなって、
「下ろしてください……」
とほぼ涙目で抗議した。

「だからだめって言ってるでしょ？」
「……」
「そのままおれの家泊まってきなよ」
「なんでですか！」
びっくりして、声が裏返った。

「だって、どうせ帰っても広い家に1人でしょ？」
「でも、明日学校が……」
「休みなよ。てか、休みなさい」
「……先生が学校に電話してください」
「電話？……ま、いっか。そんぐらいは聞いてあげよう。そこまで鬼じゃない」
ふふ、と小さく笑うと眉間にしわを寄せた。

しばらく無言の時間が過ぎた後、先生から議題を振ってきた。
「ね、誘拐した理由ききたい？」
「……もちろんです」
「あのね、お前もしかしたら、」
途端に、ぷるるる、と電話が鳴る。

あー、くっそ！
とか言いながら車の外に出る。
「なんだよ……」
もしもし、も言わないで電話に出てる。

駐車場には、誰もいなくて、
きっと今、櫻井先生の声だけが響いてる。

少しでも状況を探るために、耳を研ぎ澄ますと
本当にちょっとだけ聞こえた。
神経を集中させる、なんて大袈裟。

「……早く帰ってくんねぇかな。……別れたつもりだけど？……お前ってそんな馬鹿だっけ？……とりあえず、早く帰って？で。納得できねぇんだったら後日話したくないけど話す、いい？……はい、さようなら」

ぶち、と糸を切るみたいに電話を切った。