わたしの全部を、あなたに。［S］ (ページ4)

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3 パーソナルスペースページ4

「やっと開けてくれた、お邪魔しまーす」

機嫌よく言いながら、部屋に入ってきた。
どん！と、荷物をソファーにおいて座る。
膝に手をおいて、前傾姿勢になって、唖然と見ていた私を見上げる。

「ひっろいな」
「そうですか？」
「うん、広いよ。すわったら？」
「失礼します……」
少し離れて座ると、ぐいっと腕を引っ張って、いきなりパーソナルスペースを突破してきた。
近い。近すぎる。
恥ずかしくて、顔を上げれない。

「…あれ、ご両親は？」
「……あ、ごめんなさい。今日仕事で………」
「いっつも？」
「はい」
「何時ぐらいまで？」
「不定期です。帰ってこない日の方が多いかな…」
「兄弟は？」
「いません」
「ふーん…」
顎に指を乗せて上を見る。
何か、考えてるような感じで。

「いつも、ひとり？」
「まぁ、そうなりますね」
「そっか」
ふわっと私を見て笑って、カバンを開ける。

なにいまの。すっごい優しい顔だった。

「じゃー、俺を知った経緯から教えてもらおっかな」
「大学受験を控えてて、心配だから塾とか調べてたんですけど、家庭教師の方がいいなって思って、家庭教師調べてたら櫻井先生が出てきました」
「なるほどね、塾の移動の時間がもったいないと考えて家庭教師にしたって感じ？」
「…え？」
「あれ、違った？」
「いや、あってます」
「やっぱり」
ああ、頭がいい。
すっごい、話しやすい。

「これ、詐欺じゃないの？詐称してんじゃないの？とか思わなかった？」