〜本当のこと〜＊ゆくる＊ ページ5
手術室から出てきたハルヤとAの父。
結果など聞かなくても、この状態を見れば誰でも分かる。受け入れるしかないのだ。
『ハルヤくん…』
ハルヤは眠りについているが、顔は見えない。なぜならタオルを被っているから。
見えるのは衣服と…
呼吸のないことが分かる体の動き。
ハルヤはもう天国へと行っていた。
この事実にAは言葉が出ない。野坂も、まさか失敗するとは思いもせず、黙るしか無かった。
「すまないA…」
Aの父も真っ白なはずの衣服は赤に染まっており、ただただ俯いた。
この場には長い沈黙が流れ、手術室から出てきた他の看護師たちも、いつもに増してうなだれている。
『これが結果なら、きちんと受け入れる』
最初に沈黙を破ったのは、1番ショックを受けているはずのAだった。
『お父さんは、ずっと私のために頑張ってた。
今までお仕事ばかりで家にも帰ってこなかったけど、それは私のため。
生死に関わっていても傷つけたくない父親の思い』
『それが分かった今、失敗した時の責任感、悔しさ、絶望、全部重く受け止めてて、私も受け入れなきゃいけないのよ』
『失敗はしたけど、命の重さを分かったから』
悲しいはずなのに笑顔を見せるA。その笑顔には、本当の気持ちを隠そうとする努力が見られた。
Aは最後、軽くハルヤに別れを告げると、切り替えたように病院を後にした。
ホテルに戻って部屋に入る。
「A」
ずっと何も喋っていなかった野坂が、ようやく口を開いた。
「どうして嘘をついたの？」
野坂には分かっていた。本当のことは言ったが、あんな簡単に流すような人ではないと。
『だって…』
さっきまでの態度とは違い、とても弱々しい。今にも泣き崩れてしまいそうなほどに声も小さい。
『ああするしか方法がなかったのよ…
死を認めて、日本に帰る、そんなのできない…』
Aはついに泣き出した。野坂は軽く抱きしめながら聞き始めた。
「本当は受け入れられてなんかない、そうでしょ？」
『そんなの無理…！今回は前より軽い手術で成功するって思ってたのに…』
「僕も悪かった。違ったらすごく心配をかけるようなことを言って」
『私はこれから何をすればいいの？分からないのよ…ハルヤくんがいなくて、代わりになるようなこと…』
また前のように自分を責め始めた。だが野坂は、
「Aにだってできることはある」
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