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マクベス その1 ページ10
「行くぞ」
『ちょ……待って』
青年に腕を引かれながら後ろ髪を引かれる思いで後ろを振り返る。
「…今宵招待されし客は合わせて4人。
1人は沈黙を貫き通した聖職者。
1人は数多の戦場を超えた猟人。
1人は信念を曲げない執行官。
そして一人は……もう、わかっているわね」
『…。』
「運命とは数奇なモノよ。一瞬で全てがひっくり返ってしまうこともある」
鏡の中のひび割れた顔が、
「……私を、楽しませて頂戴な」
曲がり角を渡る一瞬、悲しげな表情でこちらを見る美しい…顔に見えた気がした。
二人分の足音だけが聞こえる廊下。
その静かな音に耐えきれずに、私は口を開いた。
『……は、はじめまして…？』
「私と挨拶をする必要なんてない。」
一言で片付けられてしまったが。
『……じゃあ、せめて名前を教えてください。』
「名前。………名前か。」
その人は立ち止まって私の方を向く。
「…なま、え…」
『…？あの、どうしたんですか？』
「……私の、名前は。……………マクベス。」
『…マクベス？』
私がそう聞き返せば、マクベスはその言葉を噛み砕くようにゆっくりと返答した。
「…あぁ、そうだ。…私はマクベスだ。」
その人は酷く歪んだ顔でそう言った。
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