沈黙者 その1-1 ページ6
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少し急ぎめに歩きながら、事の異常さを知る。"黒蛍"とは霊的なものだ。私が呼んで彼が応じた、それだけに過ぎないけれど。…基本的に、彼が死ぬことは無い。この荘園に来てからは魂の抜けた抜け殻のようなものになってしまっているが、本来は気さくで面白い良い奴だ。
…けれど、さっきその繋がりが一瞬切れた。それは彼が本気になろうとした事にほかならなくて、それと同時に私の部屋へ侵入者が入ったことを意味する。
『あー…こんな事ならもうちょっと運動しとくべきだった…』
この荘園は基本1週間に1度くらいゲームに出ていれば咎められることは無い。それを利用して私は必要最低限しかゲームに赴かない。ので体力が落ちた(元々無かったけど)。それまでは吸血鬼の権能使ってたから特に体力とか必要なかったのだ。送り迎えは蝙蝠に任せればいいし、なんならほぼ外に出ない。
『…？』
見たことの無い…いや、見たことはあるんだけれどあんな見た目のサバイバーなんていたか？
服としては黒が基調の…そう、まるでシスターのような格好。
『………しす、たー？』
…何か、気に触るようなことでもしたかな？そんな覚えはないんだがな…。嗚呼、でも、きっと、
『？』
山の、麓の…なんだって？どうしようか、酷く頭が痛い。金槌か何かで頭を叩かれているようだ。
…痛む頭を抑えながら扉の方まで歩いていれば、そのシスターが振り返った。
「キサマは…」
『嗚呼、初めまして、シスター。わたしは、そうさねぇ……しがない旅人さ』
「…そうか、私は沈黙者。神に使えるものだ。」
…神に使えるもの、か…ホンモノの神を彼女は見たことがあるのだろうか？…見ていないのだろうなぁ、知らないのだろうなぁ。神どもの混沌さも、何も。…嗚呼、人とはこんなに哀れな者だったか。
そんなことを考えていれば、シスター…沈黙者、だったか？が此方へ歩んできた。
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