鏡の中の夫人 その１-1 ページ4
おかしい、鏡が割れすぎた。
それに、青がベースの縦長の鏡は割れ方がそこまで酷くない。とりあえず割った、って感じがする。
『…どうなってんだか…』
でも確かに感じる、この荘園はおかしな事になっている。…荘園主がそう仕向けたのかは分からないけれど。
そう思いながらぼんやりと今や慣れたハンターの館を歩く。これまた不思議なことに私が歩く靴音しか聞こえない。…と、思えば傘が飛んできた。
ぴたりと止まって傘が開き、どろりと中から液体が流れ出す。1度瞬きをすれば、その液体は高身長の白い服を着た青年となっていた。
「あぁ、やっと見つけましたよ。」
『…これどういうこと？遂にやったの？』
「遂に、ってどういうことですか…？違いますよ。」
『じゃあこれは？』
「……新しく入ったハンターを知っていますか？」
『…ペンギン？』
「の前の女性の方です」
『あー…血の女王、だっけ？』
広い廊下をふたりぼっちで歩く。
「はい。その方に新衣装が届きまして」
嗚呼、なんだそれ。酷く既視感のある話だなぁ…。
「…そう言えばあなたも？」
『……見てわかんない？』
こちらを見て苦笑いしたかと思えば足が止まり、二股に別れている廊下の、彼らの部屋と逆側を指さした。
「あそこにあるの、見えますか？」
『青い…鏡…？』
「はい。アレには近づかないようにお願いしますね」
そこにあったのは等身大の大きな鏡。…ハンターの、等身大なのだからその鏡の大きさがどれだけ大きいかなんて言う必要も無いだろう。
『…何があったの？』
普通の人になら見えないものも、私には見える。
あの鏡の近くは濡れていて、そして硝子のようなものの欠片が落ちていた。
…鏡自体も、ぼろぼろだった。
「…私たちにとっては緊急事態なんですけどね」
明かりの少なくなった廊下の先で、立ち止まった彼は下を向いて。…少し悩んでから、こう言った。
「その血の女王…マリー…さんが新衣装を着てから、
________あの鏡に吸い込まれたんです」
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