[めいこい] ー消えた花嫁ー [明治東亰恋伽] (ページ23)

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ー花嫁と負けず嫌いな画家ーページ23

「何言っているんですか、鴎外さん。彼は柊冬夜

れっきとした男性ですよ」

だろ？と同意を求められて慌てて私は頷いた

「あ、ああ。初めまして、鴎外さん。俺は冬夜って言います。冬に夜で冬夜。

よく女々しいって言われますけどこれでも男ですよ」

「おや、そうだったのかい？これは失礼。あまりにも綺麗な顔立ちだったからね、女性かと」

「ははっ、そうですか」

これは誤魔化せた、のだろうか？

まあ、菱田君がすぐにフォローに入ってくれて助かった。どうやらどちらももう疑っていないようだ

というか、そんなに私の男装はわかりやすいのだろうか

やっぱり髪を結んだ程度ではダメなのかもしれない。藤田さんも菱田君も髪が長いし中性的だからいけると思っていたのだけれど

今後の服装などを考えていると、鴎外さんが口を開いた

「さて、春草から聞いた話だと右腕に打撲の跡があるらしいね」

「あ、はい。大したことではないんですけど」

「いや、そういった大したことはないと思って油断していると大事になりかねない。一応見てみよう」

そう言われたので仕方なく袖をまくり右腕を彼の前に出した

彼は私の腕に手を添えて、青紫色になった痣を検査してくれた

といっても、簡単な検査だ。触ったりして痛みがないか、とか

いつ頃、どのようにしてこの痣を作ってしまったのかと聞かれたりした

まあ、結果的にはそこまでひどい打撲ではないと言われた

「だけど、万が一を考えてあまり右腕は動かさないようにね。稽古の時も気をつけたほうがいい」

「はい。気をつけます」

検査が終わると鴎外さんは急にニヤニヤし始めた

「それにしても、やはり今朝の言葉を気にしていたのではないか。春草」

今朝の言葉？いったいなんの話だろう

私はそんな疑問を抱えながら菱田君を見た。彼はと言うとすこし面倒くさそうに答えていた

「別に、鴎外さんに『友達くらい家に呼べ』なんて言われたことは気にしてませんよ

大観だって連れてきたこともあるじゃないですか」

「しかし彼も数回しか来なかったではないか。それに友人がそれだけというのはいささか問題がある。良好的な関係は広めておいて損はないさ」

「はあ」

口と表情では面倒くさそうな顔をしているが、もしかしたら菱田君は相当な負けず嫌いなのかもしれない