ー花嫁の願いー ページ3
ついに、ここまで来てしまった
誓詞奏上、誓いの言葉だ
目の前にある紙を読むという行為は
私自身も彼との結婚を認め、それを神に誓うということだ
彼はその文章をスラスラ読み上げてみせた
「なにとぞいく久しくご守護下さいますようお願い申しあげます。
夫、鬼柳 司」
言い終わるとこちらをちらりと見てきた
あとは、私が名前を言うだけ
「つ、妻」
名前を言うだけ
それだけで、私は、私たちは
私たちは？
夫婦になるの？一生涯をこの人と過ごすの？
思わず、ぎゅっと右の手を強く握る
「くち、な、し…..」
そんなの
そんなの….！
「嫌だよね？」
「え？」
ふと、声が聞こえた
頭を上げて声のした方に向けると、そこにいたのは媒酌人だった
でも、私の知らない人
銀髪の男性がいた
目を細め、ニコニコ笑いながらこちらを見ている
「今ならまだ、間に合うよ？」
彼は小さな声でそういった
今なら、間に合う？
私が急に黙り込んだから、人々がざわつき始めた
目の前の彼はわざとらしく、咳払いをした
「ごほん、よろしいですか？」
彼は私の目を、じっと見つめながら聞いた
金色の瞳が私を射抜く
「汝は、今後、この方を愛し、夫婦の道を守り、苦楽を共にし、平和な生活を営んで、終生変わらぬことを、誓いますか？
それとも、重たい鎧を捨て、自分の心に従い、婚約を破棄し、月に願い、ここから去りますか？」
彼の言葉に会場中がざわついた
私はというと、思いもよらない発言に膠着してしまった
彼は、今、私に選べといったのだ
結婚するか、ここから逃げ出すのか
驚いた、けど
本当に、ここからいなくなれるなら…..
私はふと浮かんできた涙をこらえて笑った
「去ります」
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作者名：Yukki | 作成日時：2015年2月15日 22時
