ー花嫁と画家ー ページ20
「へえ、画家なんだ」
「まあ、駆け出しですけど」
「どんな絵を描くんだ？」
「普通の絵ですよ」
不思議だ
男装して、口調も声も男性のものにしてみると
自然と自分が本当に男性になったような気さえするのだから
これほどまでに男性と親しく話せたことが今までにあっただろうか
まるで友達としゃべっているかのようにスラスラ出る
まあ、私が話している相手はといえばすこしうんざりしているようだが
そんなの御構い無しに私は話してしまう
この感覚がなんだか、すごく楽しいのだ
「画家かー、すげーな。俺はどうもうまく描けないから憧れるな。そういうの」
「…..そういうあなたはなにしてるんですか？」
「え、お、俺？」
「はい」
どうしよう、全く予想していなかった質問だ
「俺は、なんていうか」
「？」
「とくにこれといったことはしてないんだけどさ、
あるお人に引き取られてな、そこで武術の稽古をつけてもらいながら雑用係やってるんだ」
嘘ではない、嘘ではないのだが
つい、嘘をついているような気がして余計なことまで口走る
「雑用係、ですか？」
「ああ、その屋敷のお方がなんともおっかなくてよー
まあ、仕事柄もあるんだろうけどよ、厳しいのなんの」
ペラペラと口が動く
「ほら、この痣とかこの前その人の技をまともに食らっちゃってよ。本当に痛かったんだよなー」
見せなくてもいいのについ最近右腕に出来た痣と傷を見せる
「……確かに、痛そうですね」
「だろ？！」
傷を見た少年は眉をひそめ、なにか考え出した
「............」
ここで口を挟むと怒るだろうか、と思い私は彼と何も話さずに歩いていた
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作者名：Yukki | 作成日時：2015年2月15日 22時
