はじめまして。結婚してください。【紫】② (ページ45)

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写真を撮って満足した時。すでに外は夕陽で真っ赤になっていた。
きっともう…

「辰哉」
「うん。わかってる」

辰哉は私の横から立ち上がって私を見下ろした。

「Aちゃん」
「ん？」
「俺がAちゃんをヒロインにしてみせるって言ったの覚えてる？」
「覚えてるよ」
「今ね、Aちゃんは最高にヒロインだよ」
「何その変な日本語」
「わかんねえけどとにかく今俺の隣で笑ってるヒロインはAちゃん。脇役なんかじゃないんだよ」

辰哉は微笑んで私にの両肩に手を置いた。

「目瞑ってて」

その言葉のままに目を閉じる。

「大好きだよ」

その言葉のすぐ後に唇に温かさを感じた。
それと同時に、肩の、唇の、さっきまで感じていた辰哉の存在が消えた。

目を開けるとそこにはもう。

辰哉はいなかった。

残されていたのはもうすっかり慣れたインクの香り、彼がさっきまで着ていた服。
ただ、それだけだった。

ああ、本当に帰ってしまったんだ。
しかもこんなにもすぐ消えてしまうなんて。
普通漫画なら体が光って徐々に消えてく…って感じじゃない。
いつも漫画みたいなことしてたのに、なんで、

「こんな時だけ違うの…」

一筋涙が流れて、それからはずっと止まらなくて。
1人ソファーの上で泣き続けた。