はじめまして。結婚してください。【紫】② (ページ31)

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そのまま直行で家に帰った。
帰りは一言も話さなかった。
緊張して話せなかったが正しいのかも知れない。
今まで好きだって言う気持ちはあったし、それなりにドキドキしたりもしてきたけど。
こんなにドキドキするのは初めてかもしれない。

隣を無言で歩く辰哉の手を軽く握ってみるとあちらからは少し強めに握り返された。
ちらっと辰哉の方を見ると前を見ていてこちらは見てくれなかった。
でも横顔のフェイスラインとか、喉仏のラインとかがすごく綺麗で少し見惚れてしまった。

家の前について鍵を開け、少し深呼吸をして家に入った。
ただいま、と呟くと後ろからおかえり、と小さく聞こえた。
それに対して私もおかえり、と返して靴を脱ぎ、辰哉が靴を脱いだのを確認して抱きついた。
辰哉も抱きしめ返してくれた。

彼の胸の辺りにある顔を上に向けるとまるで愛おしいものを見るかのような優しい目で私を見ていた。
目があって、それから玄関だっていうのに夢中でキスをして。
彼の舌が入ってきて私の力が抜けて1人で立っていられなくなって寄りかかるとキスをやめてベッドまで抱っこされて連れて行かれた。
ベッドで私を寝かせると辰哉は私の上に覆い被さるように乗ってきた。

「Aちゃん。いい？」
「辰哉なら、大丈夫」
「なんでそんなかぁいいこと言うの。止まんなくなるでしょ」
「…いいよ」

もう知らないからな、と私に口づけて。
それから私たちは体を重ねた。
お互いに体を誰かと重ねることは初めてではない。
辰哉は漫画の中で重ねていたし、私も元カレと重ねていた。
だけど、初めての時のような緊張と、怖さと、それから嬉しさがあった。

何度も何度も、キスをして、名前を呼び合い、愛してると言い合って。
とても幸せな時間だった。