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「え、えっと」
「ん？言ってくれないの？」
「ぜ、全部だもん、」
「へ〜」
私の回答が気に食わないとでもいうように私を強く抱きしめ。
「言ってくれるまで離さないよ？」
なんて言うから。
「か、会社に連絡するから」
とか言って逃げて。
会社には昨日、何度も長期の休みをとって申し訳ないと謝って1週間分の休みを取ったのだ。
少しでも辰哉と一緒にいたかったし彼がいなくなったあとは泣いて外に出れない状態になることはわかってたから。
もちろん社会人としてそうホイホイとっていいものではないがこれはクビ覚悟なのだ。
彼と過ごせる残りの時間をいかに彼のために費やせるか。それだけが今の私の頭の中の全てだ。
「休むの？」
「うん。そのつもり」
「筋肉痛は？」
「すごくマシ。もちろんまだまだ痛いけどね」
「じゃあ今日はちょっとだけデートしよう」
デート。
長い間聞いてなかったからその響きがどうもくすぐったくて。
「うん。行きたい」
そのくすぐったさが私を逆に素直にしてくれた。
辰哉は満面の笑みで出かける準備をしようと張り切り始めた。
私もその姿を見てたら嬉しくなって。
当分着てなかった可愛らしいワンピースを引っ張り出してヘアスタイルもメイクバッチリ決めた。
翔太との…いや、元カレくんとの数年前のデート以来のオシャレだ。
このワンピースは結局彼の前で切ることはなかった服だけどここで彼よりもずっと好きになれた辰哉のために着るのが最適だと思った。
「Aちゃん準備できた？」
「うん。お待たせ」
部屋をひょこっとのぞいてきた辰哉に私は笑いかけた。
多分さっきの顔、
「「めっちゃヒロインだった」」
2人の声が揃って思わず笑った。
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作者名：雪野真哉 | 作成日時：2024年3月15日 22時
