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なんて思いながらドアのそばでカバンを抱きしめて立っているとお尻の辺りに何か当たってる感じがした。
当たっているというか…触られてる…？
うわ。痴漢だ。初めてされた。すご〜こんな感じなんだ。へえ気持ち悪っ。
なんて呑気に考えながら向きを変えようとするが満員のせいでなかなか変えられない。
やばい、本格的にキモいぞ。
ふと目の前に立っている渡辺先輩を見ると押し潰されないようになんとかドアに手をついて立っていた。
先輩に助け求めたいけど…いいのかな。
「…なんだよジロジロ見て」
私の視線に気づいたのか私に話しかける。
この時ばかりはかっこいい、大好き、天才なんて言ってられなくて。
震える手で先輩の服の袖を掴む。気持ち悪さのせいで声が出ない。
「なんだよ急に…」
先輩は私の様子が違うことに気づいて私の後ろに立っていた人の手を掴んだ。
「お前何やってんだよ」
「え、いや何も、」
「すみません。こいつ痴漢です。誰か駅着いたら証言お願いします」
先輩は男の人の手を掴んで上にあげ、周りに呼びかけた。
そして空いている方の手で私を自分の後ろに移動させてくれた。
安心して少しだけ先輩の背中に捕まって泣いてしまった。
結局その男の人は駅員さんに引き渡して少し話を聞かれた後私たちは解放された。
会社には少し遅刻してしまうので先輩が会社に連絡を入れている。
「お前大丈夫だったか？」
「はい。ありがとうございました！」
「怖かったろ？もっと早く言ってくれりゃあよかったのに」
そう言って優しく頭を撫でてくれる先輩。
いつものつんけんした態度とは全く違うその優しさに胸が高鳴った。
「せ、先輩」
「ん？」
「先輩マジで王子様すぎません？え、実は今白馬とか乗ってます？なんですか、お城まで行くために迎えにきてくれたんですか？あ、それとも大天使様だから天からのお迎えですか？もうどっちにせよ私をお迎えにきてくれたんですか？え？天才ですか？ありがとうございますありがとうございます」
「…お前元気だな」
ちょっと呆れられたけど推し様のおかげで今日も元気にお仕事(推し事)頑張れそうです！
今日も愛してる私だけの推し様ぁっ！！！
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作者名：雪野真哉 | 作成日時：2024年3月15日 11時
