雪降る街で君とキスする (ページ5)

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大学院生【緑】ページ5

私は、今までの人生で恋人が一度もいなかった。

放課後、制服のまま好きな人とクレープを食べることも、手をつなぐことも無いまま部活に勤しみ、勉強は程々にやっていて。
このまま誰かと恋愛したりすることもなく死んでいくのだろうか。
そんなことばかり考えていいるうちに形だけではあるが大学生になった。

大学１年生の４月。
アルバイトを始めたのは、小さい頃家族でよく行っていたファミレス。

無事採用されて初のバイト日。
バックヤードに入るとそこにいたのは一人シフト表を見てる男の人。
身長が高めで優しそうな人だった。
でも私は人見知りだし、あちらも私を気にかける様子もなく、なにも話すことがないまま3ヶ月が経った。

そんなある日、休憩が被った時にその人が話しかけてきた。

「ねえねえ。どこの大学？」
「あ、えっと、」

その人は私と同じ大学の４つ上の大学院生で、阿部亮平さんと言うらしい。
話してみるとかなり関わりやすいし話やテンションも合うことがわかった。

今までの無口、物静かな印象とは異なり、笑っている彼がなんか可愛いなと思ってしまった。
私にとって４つ上というのはかなり大人で、そんな大人の可愛い笑顔を見てしまった、と思った。

それ以降、彼は私にちょっかいをかけてくることが増えた。

「Aさんお疲れ様〜今日あたふたしてたけど大丈夫だった？」
「いやそれがよくわからないこと言われちゃって」
「あらら。次は俺呼んでくれたら俺が対応しにいくから」

ね？と首を傾げて私が頷くのを待っている。
その仕草や言葉、声、雰囲気。
私は彼のことをどんどん好きになっていった。

それから私が20歳になって初めて2人でご飯に行った時。
阿部さんは水族館に行きたいと目を輝かせて言っていた。

「そうなんですね行かないんですか？」
「一緒に行く人がいないんだよね」
「そうなんですね。じゃあ…一緒に、どうですか、？」

恋愛慣れしていない私が頑張って絞り出した言葉。
阿部さんは笑顔で頷いてくれて今週末2人で出かけることになった。