深夜2時【橙】 ページ11
深夜2時。
六畳半に男女が2人。
テーブルの上や手にはお酒の缶。
そんなシチュエーションで何も起こらんわけもなく。
「Aちゃん。嫌なら言って…拒否してくれてええから」
同じゼミの女の子、Aちゃんを押し倒して上に跨った。
彼女もこうなるのが分からんかったわけやないはず。
日付越えたんに帰らへんのやもん。我慢できんかった。
今日彼女が俺の部屋に来たんは、俺が失恋したと言ったから。
とある授業が被っている女の子と仲良くなり、その子に告白したところ相手に彼氏がおったというオチ。
まあ全部作り話なんやけど。
大学生にもなって失恋如きで落ち込むなんて馬鹿らしいってわかってるんやけど、これこそ好都合。
だって彼女は弱ってる男の子が大好きだから。
弱ってる姿を見せたら絶対に恍惚の表情を浮かべながら慰める。
それがわかってるから彼女を呼んだ。
「康二くん、つらかったね」
そう言ってうっとりした表情で俺の頭を撫でてキスしてくる彼女。
最初は触れるだけの軽いもの。
そのうちに長く、深いものになっていく。
これや。俺が求めてるんは。彼女が俺だけを見てこうやってる瞬間が好きなんよ。
まあ彼女が求めてるんはこの後の体の関係なんやろうけど。
「やっぱりこういうのは良くないよな。ごめん。起きれる？」
「え？」
「さすがにこういうのはあかんよな」
「康二くん、」
そのびっくりしたような残念そうな目。
その目がええんよ。
お互いに歪んでるって分かってるけどそれでも俺は、
「でも付き合ってたら問題はないよな？どう思う？」
「まあ…そうだね」
「ほな付き合うてみる？」
「え、でも、」
「やって今、俺のことしか考えれへんやろ」
そう言ってキスを落とすと唖然としている彼女。
卑怯者？
好きに言ってくれればええよ。
だってこうでもせえへんと彼女は俺のもんにならへんもん。
「付き合うてくれる？」
「…わか、った」
「そうやと思うた。別れるとか言っても聞かへんから覚悟してえや？」
軽くキスを落とすと彼女はもっとと言わんばかりに俺にキスをし返した。
もっと俺を、俺だけを求めて欲しい。
何かしんどいことがあって潰れそうな時も、どんな時でも俺だけ求めとってほしい。
だって俺も、
弱ってる女の子が好きやから。
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作者名：雪野真哉 | 作成日時：2024年3月26日 0時
