道化は〔わらう〕【文スト】〜青の時代編〜 (ページ46)

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中也は治を睨む。
「子供は殺すな。」
「皆聞いたな？仕事の時間や。先刻打ち合わせした通り、子供には傷一つ追わせたらあかんで。」
中也の言葉を聞き、俺がそう云うと、治は身を翻し、黒服達を連れて行った。
「そうか。此の状況まで全部、組み立ててやがったのか・・・。」
「そうやなあ。まあ、今回は治の完全勝利、中也の完全敗北や。」
そう云って俺は中也の方へ行く。
「ま、俺もこうなる事は判っとったんやけどな。」
少し笑いながら、俺は中也に無理やり薬と水を飲ます。
中也は咳き込む。
「飲ませたのは解毒剤や。水には軽く痛み止めが入っとる。」
「ｺﾞﾎ乱暴すぎんだろ・・・。まあ、ありがとよ。」
「どう致しまして。少しすれば、ちょっとは動けるようになる筈やで。」
そう云って立ち上がり、戦場の方へと向かう。
「悪魔、か・・・。あの野郎。」
中也は治が移動していった方を見た。
「・・・上等じゃねえか・・・。」

此処はマフィアビル最上階の執務室前。
中では、首領と中也が話している。
俺は、執務室前で聞き耳を立てている。
「何だ？此の帽子は。」
中也の声が聞こえる。
「其れは蘭堂君の遺品だ。」
「マフィアでは普通、新人を勧誘した者が責任を持って面倒を見る。其の徴に、身につける品を一つ買って与えるのだよ。太宰君には黒外套を、A君には眼帯を与えた。」
「君には其れだ。」
そして話は、資料の話になる。
資料とは、蘭堂さんが生前、中也の、荒覇吐の調査をしていた時の資料だ。
中也にとっては、其れが唯一の手掛かりだ。
「一つ教えてくれ。組織の長とは何だ？」
資料の話が終わり、中也が真剣な声が扉越しから聴こえる。
少ししてから、森さんの声が聞こえる。
「長とは、組織の頂点で有ると同時に組織全体の奴隷だ。組織の存続と利益の為なら、凡百(あらゆる)汚穢(おあい)に喜んで身を浸す。部下を育て、最適な位置に配置し、必要であれば切り捨てる。」
「其れが組織の為になるのなら、私はどんな非道も喜んで行う。其れが長だ。」
「全ては組織と、此の愛すべき街を守る為に。」
森さんの言葉に、何か呟いている中也の声が聞こえる。
「なれば此の血潮、全てを御身の為に捧げます、首領(ボス)。貴方が奴隷となって支える此の組織を守り、貴方の奴隷となって敵を砕く。」
「そして敵に思い知らせましょう。ポートマフィアに蔑する者が、どれほど苛烈な重力で潰されるのかを。」
中也の、森さんへの忠誠の言葉が聞こえる。
其の言葉を聞いた俺は、密かに其の場を離れる。