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「運が無かったねえ。苦しいかい?」
前で歩いていた中也が振り返る。
「今から手当しても助からない。」
この声は治だ。
「それでも死ぬまでに5分程掛かるだろう。其の5分は地獄の苦しみだ。僕なら耐えられないね。」
何処から持ってきたのか、治は拳銃を持っている。
「此の銃で苦しみを終わらせて欲しいかい?」
へえ。治はとことん苦しみが無いようにしたい人か。
光の無い目で隊員を見る治。
隊員から見て、治はどう見えるんやろ。
悪魔?死神?救世主?神?
隊員から少し離れながらそんな事を考える。
「頼むなら喋れなくなる前にしたほうが良い。」
「撃ってくれ。」
荒い息をしながら掠れた声で隊員はそう云う。
しゃがんでいた治は立ち上がる。
「判った。」
そう云って隊員に銃口を向ける。
隊員を無駄に撃ちながら治は笑う。
「なんて贅沢なんだ。」
瞬間、拳銃が宙を舞う。
中也が治の手を蹴り、拳銃を手放せたのだ。
ガチャンと音を鳴らしながら地面へ拳銃が落ちる。
「無駄に死体を撃つんじゃねえ。」
「そうやで。銃弾の無駄使いはあかんで。」
そう云う問題じゃねえ、と云う中也。
「そうだね。其の通りだ。」
そう云って治は歩き出す。
「君の云うことは恐らく正しい。普通はそう考えるのだろう。」
俺はと云うと少し離れた処に落ちた拳銃を拾っていた。
「なあ、こうやったら死ぬと思う?」
自分の顳顬(こめかみ)に銃口を向ける。
歩いて居た治が立ち止まり、振り返る。
「何をして居るの。」
「ん?見て判らん?」
そう云って少し笑う。
「じゃあね。3、2、1・・・。」
「A!」
焦ったような声が聴こえる。
拳銃の引き金を引く。
「バンッ!」
静まり返った此の場に、笑い声が響く。
「あははっ!残念ながら弾切れ。治がいっぱい撃ったからやで?」
そう云いながら二人を見る。
「ん?何でそんなに焦っとるん?中也は兎も角、治は俺が死なないこと知っとるやろ?」
「死なないってどういう事だ。」
中也がそう云う。
「言葉道理の意味やで。何でかは知らんけど、俺は死なないし、死ねないんや。全くもって面倒や。」
その間、ずっと治は黙っている。
「おーい、治?どしたん?」
そう云って治の前で手を振る。
「ねえ。今後、そんな事しないと僕に誓って。」
「え?」
「誓って。」
どうしたんや、此奴。
一つため息を付いて応える。
「判った。誓うわ。」
「絶対だからね。」
そう云うと治は館へ歩いていく。
マジ何なんやろ。
首を傾げながら俺も館へ行く。

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ゆき(プロフ) - 作者ですっ!微妙に題名?この作品の名前変えます! (2021年9月11日 23時) (レス) id: c2037b5d01 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆき | 作成日時:2021年8月16日 12時

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