道化は〔わらう〕【文スト】〜青の時代編〜 (ページ16)

今日:2 hit、昨日:1 hit、合計:23,143 hit

＊14 ページ16

かつて大きな爆発が起きた。
爆発は建物、人、その地の思い出を吹き飛ばし、大きなクレーターを残した。
其処に勝手に人が街を作った。
其れが擂鉢街。
確か擂鉢街ってこんな説明やったよな。
「なあ、治。俺の手を引っ張りながら歩いて本を読むって転けへんの？」
治の愛読本、完全自殺読本を見ながらそう云う。
正直嬉し過ぎて息止まりそう。
治は俺の質問には応えない。
「手、離してくれへん？動き難い。」
そう云うと立ち止まって此方を向く。
「だって手を離したら帰るでしょ。」
「もう此処迄来たんやから帰らんよ。」
「でも駄目。」
ええ～、という抗議の声を治に返す。
結局聞き込みが終わる迄手を繋がれ、連れ回された。
勿論聞き込みは治一人でやって貰った。
「お二人共。此の地域は抗争地域です。ご注意を。」
ずっと背後にいた広津さんがそう云う。
「抗争？」
治が振り返り、広津さんに聞き返す。
其れを広津さんは丁寧に応える。
何も知らない奴でも分かるように。
俺はもう知っとるからそんな広津さんの言葉を聞き流して、治の手を外すことに躍起になる。
途中、森さんから電話が掛かってきて、仕方なく俺の手を離して電話に出る。
最初から離してくれたらええのに。
「もしもし。・・・うん、色々判ったよ。結論から云うと。」
「先代は居たよ。・・・蘇ったんだ。地獄の底からね。」
治、どんな顔しとるんやろ。アニメじゃ見れんかったしなぁ。
てかやっぱいい声やなあ。耳の良い保養になるわ。
「うん、帰ってから詳しく報告、。」
瞬間、何かが猛速度で治に激突する。
治は何故か俺の服を掴む。
ぐえっ、と云う声を出しながら治とともに吹き飛ぶ。
「太宰さん！檀さん！」
広津さんの少し焦った様な声が聞こえる。
土埃と建物の破片を巻き沿いに、俺と治は止まる。
土埃に咳き込みながら俺は耳をある声に傾ける。
え？なんでかって？多分治の上？に立ってるであろう中也の声、基笑い声を聴く為だっ！
「こりゃ良い。餓鬼とはなぁ。泣ける人手不足じゃねェか、ポートマフィア。」
あー良い声。
治と同じく耳の良い保養になるわ。
「なあ。なんで治、お前は俺の服を掴んだん？お陰で巻き添え食らったやん。」
「僕は痛いの嫌いなんだけど？」
そう中也に云うと此方を振り向く。
「僕がAの服を掴んだのは偶々さ。驚いて手を伸ばした先が君の服だったのさ。」
悪びれもなくそう云う。
こいつっ！絶対わざとだろ。確定でっ！