第十七話 ページ20
玉田side
「貴様…主を解放しろ!」
フリーズしていた難波さんはクライをほんの数秒、見つめたと思うとすぐさま鞄からエアガンを取り出しキアノールに向かい数発発砲した。
吹き荒れる吹雪のせいかあまり音は響かないものの至近距離の僕は反射的に耳を塞いだ。不明瞭な視界の中黄色いシルエットが近づくのが見える。
「この無礼者!!何すんだ!」
「いやーごめんごめん一旦ごめん?」
「主!先に浮遊と退散を!」
きっと発砲に怯んだキアノールからクライが逃げ出したんだ…見た限りキアノールに怪我はないし、銃も外れたんだろう。良かった。
…そうだ、他の皆は?僕と難波さんはなんとか無事だけど他の皆の姿が吹雪のせいか影すら見つからない。
難波さんに聞こうと思いふと隣を見ると、なんと前に一度だけ見たことのある古ぼけた本を開いていた。こんな時に本?そういえばさっき浮遊とか退散とか言っていたけど…。
彼女の吹雪も気にせず本を凝視し何事かを呟くその姿はまるで怪しげな占い師や魔女のようだ。何となく気になって本の内容を見ようとして、
「っ!?」
「あれっ大丈夫?雪でも目に入った?」
「だ、大丈夫…です」
その本に書かれた英文、所々に張られた付箋の走り書き、それらを理解しようとした直前、突如両目に痛みが走り開けていられなくなった。
幸いすぐに痛みは引いたけどそうなったことを話す前にまた異変が起きる。
「…主、お願いします」
「ん…LEVITATE」
…空中浮遊?クライが呟いた単語を理解すると同時に今度は全身に浮遊感を感じだす。正直気持ち悪い。実際には浮いてないし。
一体何をしてるのか、いくら文句を言っても目も合わせずあの本に向き合い続ける彼女は再び呪文を唱えるが如く呟き始め、
「RETREAT」
つまり退散。この状況からしてその対象は…
「Aaaaa!!!!」
「うるさいなあ、もう…女神様大丈夫?」
それが苦しみもがくような、おぞましい叫び声に耳を塞いだり嫌悪感に顔を歪ませる中、彼女を一瞥すると
「な、何で消えない!?主!」
「分かるが分からん!」
叫び声どころじゃないと言いたげに明らかに別のことに慌てている。どうしたんだ?
「一体何が、手羽先といいこれといいシナリオに書いてないことばかり…!」
「これ以上は壊れる!僕がやるから下がれ」
何があったか分からないけどクライはどうやら単独であの巨大な…イタクァ?に迫ったんだろう。
「DOMINATE」
その瞬間、吹雪が止み目の前の影は消失した。
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