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『……』
真選組に戻ったえりは報告書を書くために部屋にこもり、筆を走らせていた。
『……』
キリがいいところで筆を止め、一息つくといつの間にか外は薄暗くなっており、電気をつけるために立ち上がって背伸びをした。
電気をつけ再び作業に戻ろうと、机の前に座ると、誰かが歩いてくる足音がし、腕を止めた。
「えり、俺でさァ。入るぞ。」
『総悟?』
襖を開けた沖田の手には御盆があり、その上にはおにぎりと湯呑が乗せられていた。
「夕飯、きっと作業に夢中で忘れてんだろーから届けに来ましたぜ。」
『ありがとう。さっきまで集中してて…』
報告書を端によせ、机におにぎりを置いてある皿と湯呑を置くと、沖田は通路とは反対側の襖を開け、そこから見える夜空を見ていた。
「えり、」
『ん?』
「これ書き終わったら、甘味処に行きやしょ。」
『私も?』
「ちっとばかし休んでもえりは誰にも文句なんて言われねぇ所か、休め休めって近藤さんに言われてるじゃねぇですか。」
えりは食べていたおにぎりを飲み込み、お茶を飲むと笑って言った。
『でも、私は休ませて貰ってたりするよ。そんな頻繁に休まなくても大丈夫。』
「…えり、前回の休みは?」
『えっと…2週間前、』
「それは、街で騒ぎを起こした攘夷志士の鎮圧でほとんどなくなりやがった。その前でさァ。」
『……1か月前』
「それもとっつぁんの急な呼び出しでなし。」
『…じゃあ、分からない…かな。』
目を逸らし、そういうと沖田はえりの隣に座ってコソコソと話し出した。
「な?全然休みねェだろ。だから、俺と甘味処で街の人の声を聞くっていう体でサボり。
土方のやろーにバレねぇよう、2人の秘密でさァ。」
『!…わかった。』
そう言ってくすくす笑うと、沖田もくつくつと楽しそうに笑った。
『あ、甘味処行くんだったら、髪紐も買いに行きたいな。今日の討ち入りで無くしちゃって…』
「ん。分かりやした。それじゃあ、土方と近藤さんの話し合いの間にで2人で抜け出しやしょうか?お姫様?」
『姫って…私には似合わないよ。あ、でも似合うとしたら、姫は姫でも戦乱姫かな?』
「違いねぇや」
2人で笑うと、えりの部屋にかけてある時計がなり、えりは作業に戻るために机に向き直り、沖田は空になったお皿を回収し、土方にちょっかいを出しに行くために部屋から出た。
「えり、無理すんなよ。」
『うん。おやすみ、総悟。』
「おやすみなせぇ、えり」
沖田がそっと襖を閉めると、えりは筆を手に取った。
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作者名:Tyina | 作成日時:2022年5月29日 23時