* ページ44
『…………姫様。』
「!!、今、帰ります。それじゃ」
「待つネ!!ズルイヨ!!
自分から約束しといて、勝手に破るアルか! 私もっと遊びたいヨ!そよちゃんともっと仲良くなりたい!
ズルイヨ!!」
『…神楽ちゃん、この方は、』
「(さっ)」
『!!』
そよ姫がまって、というようにえりにそっと手を向けると、神楽の方に向かっていった。
「そーです。私、ズルイんです。だから最後にもういっこズルさせてください。
1日なんて言ったけど、ずっと友達でいてね。」
『……行きましょう、姫様。』
えりはそよ姫をそっとエスコートしながら下へ戻った。(さすがに姫を抱えて飛び降りるは危険なため、正式ルートの階段を使ってだが。)
『姫様、無事に保護いたしました。』
「御苦労。姫様、参りましょう」
『…………土方さん。』
「あ?」
「今日は、ほんとに申し訳ありませんでした。」
『おきになさらないでください。姫様に怪我がなくて本当に良かったです。』
そよ姫を城内へと送り届けたえりは立ち去ろうと一言断り、背中を向けようとした。
本来であれば局長が送り届けなければならないのだが、女性同士、年頃の娘同士の方がそよ姫も安心できるだろうと言うえりの計らいによりえりが直接場内へ送り届けることが決まったのだ。
「……婦警さんは、」
『?』
「家出をしたいと、思ったこと、ありますか?」
『………』
着替えたそよ姫の質問に、えりは一瞬黙ってしまったものの、すぐに向き直り、口を開いた。
『…私は、思ったことがありません。
私に家はなく、頼れるのは真選組のみで、真選組は確かに家のようですが、本当の家族ではありません。
それに、私は恩に報いるために真選組にいるような者です。』
「…………」
『…ですが、そんな私も時に憧れることがあります。戦いなんて知らない普通の女の子で、私が守る街で何も知らずに友達と着飾って遊んで、と。』
「!!」
びっくりしたようにこちらを見るそよにえりは微笑んで話を続けた。
『私は好きであそこにいますが……人間誰しもずっと肩苦しく生きるなんて息が詰まってしまいます。時に息抜きとして、またこちらに来るのもいいかもしれませんね。』
「婦警さん…」
『ですが、その時は城の信頼してる者を共に連れて、が条件です。姫様が命の危機に晒されては困りますからね。』
「!…はい!」
『それでは、失礼いたします。』
写真とは違う、素敵な笑顔を見せたそよ姫に一礼するとえりは今度こそ城内から出ていった。
15人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Tyina | 作成日時:2022年5月29日 23時