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『8歳になる前に、武州…あ、江戸から少し離れたところにあるんですけど……そこでさまよっていたのを近藤さん達に助けられて……その時の私が覚えていたのは自分の年齢と名前だけで…それまで何してた、とか全く覚えてないんです。
自分が思い出せるまで、それまでの間の仮の名前として"松田えり"って近藤さん達につけてもらって…。』
「……」
『だから、松田って呼ばれてもあんまりしっくり来なくて…
この事は、信頼してる人にはお話してますし、銀時さんとはなんだかまた関わる気がするんです。』

えりがそう言うと、銀時は目を閉じ、肩を少し震わせていた。

「……なぁ、じゃあひとつ聞いてもいいか?」
『なんですか?』
「……今は、幸せか?
記憶がなくても、それでも幸せか?」
『?』

えりは不思議そうな顔をしたも、

『はい、記憶は思い出したいって思ってますけど……今も幸せだって自信もって言えます!』

と笑顔になりそう言った。

それを聞いた銀時は頬を緩めポンっとえりの頭に手を置いた。土方のように撫でられるわけでもなく、ただ手を置かれただけなのに、

『……?』

何故だかえりにとって、そうされるのが、とても懐かしく感じたのだ。

「えりちゃーん!!」
『ではそろそろ、先日は本当に申し訳ありませんでした。』
「もういいって。

またな、えり。」
『!、はい、また。次はもうちょっとお話出来たら嬉しいです。』

えりはそう言って受付のおばちゃんのところに向かい、銀時の分のお金も払って店を出た。

「あれ、おばちゃん、俺の勘定は?」
「それならえりちゃんがまとめて払ったよ。なんでも、先日の謝罪も含めて、ですって。」
「えりちゃんが来てたのか」
「あの子はすごい子よねぇ、女の子なのに18歳で隊長なんて重大な役職持ってて、」
「剣の腕は強いし。」
「それに礼儀正しくって。あんなチンピラ警察の中にいるなんてもったいないくらいよ。」
「何より、笑顔がとっても可愛らしい子よねー」
「あ、そうよ、真選組と言えば…」

おば様たちの愚痴が始まりそっと離れ、銀時はえりが去っていった方向を見て僅かに見える後ろ姿を見送った。

「……記憶は失ってても、根本的な所は全く変わってねーんだな。」

ーにぃ!!にーに!!ー

ーん、どうした?ー

ーみてみて!!にーにのまねっこー!!ー

ー!!ー

「……元気でいてくれて、ほんとに良かった…」

銀時はふっと笑い、親しみの籠った、優しい瞳で見送ると、そのまま背を向け、万事屋に帰って行った。

真選組の存在意義→←*



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作者名:Tyina | 作成日時:2022年5月29日 23時

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