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“椿の森”。


そこは王族でさえも立ち入りが禁止されている国の奥深くに存在する森だった。そこに入っては行けないことは国の誰もが知っていて遊びで入ったら二度と出てこられないという。


狼はAの真意を探るように眉を寄せてAの紅い目をじっと見た。彼女はそれをわかっているのか否か無言でいつもの無表情のまま見返してくるのだった。


狼《…承知した》


『…!』


狼が言った言葉はそれだけだった。Aは頭が悪い訳では無い。そして何より感覚が鋭い。入っては行けないと言われている場所に親のいいつけを破ってまで好奇心で入るような子供ではない、と狼は知っていたからだ。


.


.


.


…そして狼が走ってくれたおかげで1時間もかからず椿の森の入口に来たのだった。そこからは禍々しい雰囲気が漂っており入るのを固く禁ずるように茨が道を塞いでいた。


『…ありがとう。狼は待ってて。行ってくる』


その場所をしばらく無言で見たあとAはそう言った。けれど狼は顔を顰めたあと言った。


狼《…馬鹿か。お前を守ることが出来なければ俺に命はない。…共に行く》


『…!うん』


それを聞いたAは少し目を見開いてから嬉しそうに少しだけ微笑んだのだった…。


.


.


.


森の中は異様な雰囲気が漂っていた。
陽の光はあまり届かず暗く肌寒い道が続いていた。
そして似たような道が広がっているため迷子になってしまえばもう帰ってくることが出来ないのも納得だった。


…けれどAは迷うことなく足を進めて行った。
狼はそれを不思議に思いながらも無言でAについて行った。


…それからどれだけ歩いただろうか。
しばらくしてぽつりとAが言った。


『…もう近くにいる』


狼は何が、とは聞けなかった。
肌を刺すようなビリビリとした冷たい棘のような空気が当たりを覆っていたのだ。いつの間にか森の奥深くに来ていたようで太陽の光はなく辺りには白い霧で周りが見えなくなっていた。


…ある程度歩いた先で霧の向こうに大きな黒い影が見えた。


狼《……》


そして…


『…あなたが私たちの国を護ってくれているんだよね』


Aはその黒い影を目にとらえた瞬間静かにそう言ったのだった。


Aの声が暗い森に鈴を鳴らすように響く。
そしてそれが合図だったように深い霧は晴れていった…。




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えいみ(プロフ) - 続きを書いてもいいでしょうか? (2022年8月20日 21時) (レス) @page1 id: 3c67f62593 (このIDを非表示/違反報告)
moeka(プロフ) - 続きの更新がなくて寂しいです。更新してくれたら嬉しく思います。待ってます。 (2021年12月1日 10時) (レス) id: d61ed9781e (このIDを非表示/違反報告)
星猫 - 知ってるアニメは何ですか? (2021年3月6日 0時) (レス) id: e8084d140d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:はち. | 作成日時:2021年1月1日 0時

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