《34》蒼葉の匂いだ… ページ39
結局、店で働くことについては「お店の手伝い」として、偶に顔を出すことにした。
Aがノイズを玄関から見送り、ふと上を見上げる。空はもう、オレンジ色に染まっていた。
海と比べて、建物のせいで空が狭く見える。が、それも自分が地上にいると自覚させてくれるから、そう悪くはなかった。
夕方の柔らかい風を受けると、扉を閉めて自分の部屋…もとい、蒼葉の部屋に上がり、電気をつけずにベッドに横たわる。
寝る時は床に布団が敷かれているが、今は敷かれていない為、とりあえず蒼葉のベッドを使わせてもらうことにした。
『……蒼葉の匂いだ…』
仰向けになり、ぼんやりと考え始める。
海で仰向けになると、波がゆらゆら揺れて、輝いているのが見えていた。とても綺麗だったことを覚えている。
今は、部屋の天井が見えている。人間だったら、断然海の中の景色が良いように思うかもしれないが、Aは、この部屋の天井が結構気に入っていた。
夕日の光が部屋に入ってきて、部屋がオレンジ色に染まっている。
ぼーっと横向けになっていたら、少しだけ眠気がしたため、目を閉じた。
蒼葉のベッドは何故か心地よくて、すんなりと眠りに入ってしまった。
クリア「あれ、Aさんは?」
夕飯の準備が終わり、クリアがリビングでテレビを見ていた蒼葉に尋ねる。
蒼葉「あぁ、ノイズを見送った後部屋に行った。今日は色んなことがあったからな〜、多分寝てると思うよ。」
クリア「そうですか…」
心做しか、クリアの表情が寂しく見える。それに気づいた蒼葉は、テレビを消して、首を傾げた。
蒼葉「…クリア?」
名前を呼ぶと、クリアは少しだけ俯き、着ていたエプロンを脱いで蒼葉の隣に座った。
両膝に両手を置き、顔を合わせずにぽつぽつと言葉を零し始める。
クリア「…最近、Aさんについて…考えてるんです……」
蒼葉「Aについて?」
クリア「はい…Aさんは、僕がこの家に連れてこなかったらどうなっていたんだろう、って…Aさんは、ここにいて本当に幸せなのかなって…」
そこまで聞いて、蒼葉は黙って前を見つめた。
本当は、蒼葉も同じことを考える時があったのだ。だが、Aが何を思っているかは、Aしか知らない。
だから、なるべく考えないようにしていた。
クリア「…Aさんのことは、Aさんしか知らないって、分かってます。けど…知らない間に、僕がAさんを傷つけてるかも…と考えると…少し…ね。」
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雪葉(プロフ) - 霊華さん» わぁぁ、ありがとうございます!! (2018年11月23日 16時) (レス) id: 964266bff5 (このIDを非表示/違反報告)
霊華 - くっそ可愛いじゃねぇか! (2018年11月20日 17時) (レス) id: 55c6bf7b1a (このIDを非表示/違反報告)
雪葉(プロフ) - 雪さん» コメントありがとうございます!僕も初めて小説を書いて、少し不安だったのですが、気に入って頂けてとても嬉しいです!宜しければこれからも楽しんでいって下さい! (2018年8月19日 0時) (レス) id: 964266bff5 (このIDを非表示/違反報告)
雪 - コメント失礼致します( ..)" 更新される度拝見させてもらってます!ドラマダの夢小説を見つけたのがこれが初めてだったので、拝見させてもらったのですが、とても面白くてハマってしまいました(*'ω') これからも無理の無い程度に更新頑張って下さい! (2018年8月18日 15時) (レス) id: f2889be617 (このIDを非表示/違反報告)
雪葉(プロフ) - ユトさん» コメントありがとうございます!ノイズが言ってくれてよかったです(笑)この作品を見つけて下さりありがとうございます!これからも是非楽しんでいってくださいね! (2018年8月16日 19時) (レス) id: 964266bff5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪葉 | 作成日時:2018年8月8日 23時