もしものお話�∧�2話 ページ34
衛ver. 藤村side
｢お嬢様〜、朝ですよ〜｣
起きてくださーい、と出来るだけ優しく声をかける。彼女…Aちゃんは、寝起きが悪いから
『んー…あと半日』
｢いやいや、1日終わっちゃうよ。起きて〜｣
『……衛が寝癖直して来たら、起きる』
｢…多分これ寝癖じゃない｣
『………じゃあ、衛がストレートになったら起きる』
｢ストレート…俺が、ストレート…｣
ど、どんなになるんだろう…。そんなことを考えていると、目の前の彼女はまた眠ってしまった。
｢あ、ダメだってば！ダメだよ、コウくんが居ないからってだらだらしたら！｣
『嫌だ、コウがいない時がチャンスなんだ』
｢もー、そんなこと言ってると、俺がコウくんから仕込まれた、対お嬢様用のお目覚め術使っちゃうからね！？｣
『…。……起きるわ』
｢超素直｣
このお屋敷の先輩執事のコウくんは、俺やAちゃんよりも歳下のはずなのに、この屋敷で1番力を持っている…気がする。お嬢様であるAちゃんが逆らえないんだ、きっと最強なのだろう
｢おはようございます。さて、コウくんが作ってくれた朝食がありますよ。先に行ってますね｣
『あぁ…うん』
｢…言っておくけど、鍵かけて二度寝しても、俺は合鍵を持っているし…コウくんが教えてくれたそれはいつでも使えるからね？｣
『…。わかりましたよ、もう』
むすっとした彼女に小さく笑いかけると、ぷい、と顔を逸らされてしまった。
｢ふふ、可愛らしいお嬢様だね｣
『……ご馳走様』
｢ご馳走様でした！…よぉし、お皿洗いは、俺が｣
住み込みで働く執事、コウくんに拾われて見習い執事になった俺だけど…今のとこ完璧にできる家事は、お茶をいれること。お皿洗い…緊張する
『大丈夫、お姉さんが見守っててあげる』
｢き、緊張が倍増…｣
『じゃあわかった、割ったら一緒にコウに謝ろう』
｢……さ、さらに緊張｣
『…あ、それじゃあ…割らずに出来たら、ご主人様として褒美を与えよう』
｢褒美…？｣
『うんっ、何がいい？』
｢えっと…お、終わって、割れなかったら考えます…｣
『はは、頑張れ〜』
｢い、いくぞー！｣
謎の気合いをいれ、お嬢様に見守られながら家事をこなす。一般的な執事は皆ぱぱっと終わらせるんだろうけど…俺もそうなれるのかな？
｢…っと、危ない…｣
『セーフ』
なれ…ると、いいなぁ…
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作者名：雪藤 | 作成日時：2019年12月4日 15時
