寒すぎる日。編1話 ページ4
雪宮side
『寒いをネタにしすぎって苦情来そう』
望月｢Aちゃん、それは壁ですよ｣
寒い寒いと騒いで何ヶ月経つだろうか…いや、わからない、というかどうでもいい。過去は振り返らない、とにかく今寒い。
『皆人くん、握手しよ』
望月｢え、あぁ…どうぞ｣
皆人くんの手を握ると、彼の体温が伝わってくる。私の手が溶けそうなくらい温かい
望月｢…冷えてますね、Aちゃんの手｣
『冷えすぎてお風呂が大変ですよ』
温かなお湯をかぶるたび身を斬られる様な痛みを感じる…天国と地獄、とはあれを言うのだろうか
『ていうか、凍えすぎて仕事できない…おこた没収されたし』
移動式おこたは涼太と昂輝に没収され、しかも剣介曰く、彼らはそれを闇に葬ったらしい。
望月｢まぁ、Aちゃんのことを考えたらそうなるんでしょうね｣
『おかげで冷えきってますが』
昂輝｢俺が温めましょうか？｣
『うわぁっ！？』
音もなく近付いてきた昂輝に後ろから抱きすくめられ、思わず叫んでしまった。
『び、びっくりした…忍びか貴様』
昂輝｢どうでしょうね｣
ぎゅう、と抱き締めてくるコウは、片手を私の手に添えると優しく掴んで自分のポケットに手を入れさせた。
『…！』
昂輝｢俺からのプレゼントです。どうぞ｣
望月｢まるでプロポーズのワンシーンですね｣
…なんて言われてるけど、ポケットに指輪が入ってるとかそんなんじゃない。コウのポケットから抜きとったのは、彼のカイロだ。
昂輝｢いい感じに温まったでしょうから｣
『ほんとだ、すごく温かい』
じわ…と指先が溶けていく感じがする。夢中になってカイロに冷えた指先をあてていると、コウの顎が肩にのった。
昂輝｢かわいい。ずっと見ていたい｣
『…』
望月｢ふふっ、仲良しですね｣
『仲良くしてもらってますー』
昂輝｢俺も。仲良くしてもらってます｣
望月｢不思議な距離感ですよね、お2人は。本当に付き合っていないんですか？｣
『やだなー、付き合ってないですよ』
昂輝｢そうですよ。まだ、口説き落とせてないんです｣
『ん？何言ってるの昂輝くん』
望月｢いつも通りですね。…では昂輝くん、Aちゃんのことお願いしますね｣
『いや、なに預けて…』
昂輝｢お任せ下さい｣
『引き受けるの！？』
よくわからないままコウに預けられた私は、大人しくコウの後について行くことにした。
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作者名：雪藤 | 作成日時：2019年12月4日 15時
