もしものお話�（�5話 ページ14
衛｢美味しかったねぇ、コウくんの手料理｣
『ん、美味しかった』
ご馳走様、と言ってお皿洗いをするコウの隣に並ぶ。こうしてみると…普段のコウと何も変わらないな。私の妄想力の貧弱さがよくわかる。
昂輝｢…別に、ヴァンパイアだから…特別何かが違うわけじゃありませんよ｣
『心の中読まれてるな』
昂輝｢顔に出てます。わかりやすい｣
『えー、昔は何考えてるかわからないって言われてたのになぁ』
昂輝｢え…そうなんですか？｣
『そうだよ』
素直に驚かれて、逆に驚く。私はどんな人に見えてるんだろうか
昂輝｢…｣
『…？』
ふと顔を上げると、コウがじっと私の首筋を見ていることに気付く。お皿洗いの手も止まってしまっていた
『…どうした』
昂輝｢いえ…すみません。気になってしまって｣
『気になる？』
なぜ、と首を傾げた途端、音もなく誰かがのしかかってきた。
剣介｢ヴァンパイアの本能だな。人間の食事で腹が満たされても…こんな美味そうな血が目の前にあったら…欲しくもなるでしょ｣
『…っ…』
耳元で聞こえる低い声にぞくっとして、剣介から逃げようとする。だけどケンに捕まってしまい…身動きが取れなくなった。
『や、だ…っ……離して』
剣介｢こーら、暴れんなよ。そんなに暴れると、俺…間違って服破いちゃいそうだよ｣
『…！』
昂輝｢ケン、そのネグリジェは薄手のものだ。あまり引っ張るなよ｣
剣介｢だって。だから抵抗すんなよ｣
『そんな…剣介が何もしなきゃ……あ…っ』
どんっ、と壁に背中がつき、剣介と壁の板挟みになる。貧血のせいであまり抵抗できずにいると、視界いっぱいに剣介の顔が見えた。
剣介｢舐めるだけ…味見さして？｣
『お前、が…それだけで済ませるかよ』
剣介｢…多分無理。でも…気になる｣
昂輝｢我慢、と言っているのにな｣
剣介｢そういうコウだって、本能には逆らえないだろ？｣
昂輝｢…それを避けるために、料理を作ったんだが？｣
剣介｢えー、じゃあコウは満足？｣
昂輝｢……まさか｣
ふい、と顔を背けたコウは、諦めたようにソファに座る。それから、私の方を一切見ようとしなかった。
剣介｢コウは強いな…我慢できるんだ？｣
昂輝｢…｣
剣介｢俺は無理。…欲しい｣
彼は別に嫌がらせをしようとか、そんなつもりで言っている訳では無い。…潤んだ彼の目が、そう語っている気がした。
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作者名：雪藤 | 作成日時：2019年12月4日 15時
