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お守り編2話 ページ3

それからしばらく不安と、始と戦う日が続いた。相変わらず歳下の子達には気付かれていなかったが、海や黒月さん、月城さんは気付き始めていた。

春「はいこれ、CDセットのプレゼントです」

『…ありがと』

隼「…。」

春くんは私をなだめるために顔を合わせるとプレゼントをしてくれたり、現場での楽しい話をしてくれた。


そして、ある日突然、その戦いに終わりが来た。とある休みの日、始が私の住むツキノ寮に来たのだ。

始「…ほら」

やや不機嫌気味な始は、私に可愛らしいラッピングの袋を差し出した。

『な、にこれ』

始「いいから開けろ。…ちなみにラッピングは恋がやった」

なるほど、恋か。きっと頑張って綺麗に結んでくれたのだろう。心の中で恋にお礼を言ってそのリボンを解くと、中に紫色の長い耳が見えた。

『…?うさぎ』

始「うさぎ、好きだろ?…やる。お守りだ」

多分守ってくれる、と小さな声で言った始をぽかんとしながら見上げていると、始はむっとして私のおでこを小突いた。

始「隼がわざわざまじないをかけたツキウサだ」

『は…?』

始「いいから、肌身離さず持っとけ。…もうあんな想いはさせないから」

『始…』

始「いざって時は、きっと守ってくれる。それに、俺だって、お前を守れる。…前はなにもしてやれなかった。でも、今は前よりも近くに居れる。その分、お前を守ることが出来る」

『…』

始「俺は大丈夫。下僕が5人もいるからな?」

『…ぷっ、ふふ…下僕って…春くん達?』

五本指を立てて不敵に笑った始を見て、心配するのが馬鹿らしくなってきた。

始「…そうやって笑ってろ。俺は、笑顔のほうが好きだ」

『…うん、ありがとう。大事にする』

小さなツキウサさんをぎゅっと胸に抱いて笑いかけると、頭を掴まれてわしゃわしゃっと撫でられた。

始「これで仲直りだ。…今までの中で1番長い喧嘩だったな」

『あぁ…記録更新?今までどのくらいだっけ』

始「最長1ヶ月。しかも仲直りじゃなくて、気付いたらAが喧嘩したことすら忘れていた」

『あはは…兄弟喧嘩ってそんなもんでしょ』

始「…。…久しぶりに笑顔を見た」

『…ん、私も久しぶりに笑った』

始「…」

さっきより優しい目になった始は、ゆっくり顔を近付けて、唇を重ねてきた。

『…!?』

もう大丈夫だと、安心させるように。深くて優しい口付けに、不安も溶かされていくのであった。

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作者名:雪藤 | 作成日時:2019年11月1日 19時

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