彼女と悪夢編1話 ページ19
雪宮side
これは…いつの事だったか…
「睦月さん、なんでテレビでは雪宮なの?」
「わかった!フリンってやつだろ!」
「いやいや、リコンじゃね?」
「おとうとくんとあんま似てないよねー!」
恐らく悪気はないのだろう。子供とは残酷なものだ…それを言われた本人がどう感じるかなんて、考える余裕がないのだから。
「あの人いつもひとりだよね」
「いっぱい告白されてるくせに恋人いないしねー」
「いいよねぇ私もモテたいな」
毎日聞こえるひそひそ話。聞こえるように言っているのか、ただ声が大きいのか。わからないが…気持ちのいいものではなかった。
「ねぇ、睦月さんだか雪宮さんだかわかんないけどさ、あんま調子のらないでくれる?」
「見ててムカつくんだけど」
最終的には呼び出され、表には見えないところにたくさん傷ができた。…やり返すことなんて簡単だ。だが、私には…加減がわからない。
「あいつさ、弟とその友達にはにこにこしてるよね」
「あんなかっこいい弟なら、姉でもそうなるでしょ」
弟の前で笑顔でいて何が悪い。始と春くんには知られたくないから、あの子たちの前では絶対に弱味は見せなかった。何を言われようが、笑顔でいた。
「また学年トップはあいつか」
「いつ勉強してんだよ、こわ」
『…』
あんたらこそ、どこからそんなに悪口やら文句が出てくるんだ。もういいじゃないか、放っておいてくれ。
『…やめてくれ』
…もう、やめてくれ
『……ぁ』
ぱちっと目を開いて、あぁ、夢だ…よかった。と安心して目を閉じる。すると暖かいものが頬にふれ、私は目を開いて視線を移動させた。
『…昂輝』
昂輝「…おはよう」
そう言って優しく微笑むコウの髪は朝日の光を受けてきらきら輝いている。…美しい光景だ
『ごめん、膝借りてたみたいだね』
昂輝「お気になさらずに。…寝心地はどうでした?」
『え。えっと…よ、かった…と思うよ』
ゆっくり身体を起こしながら苦笑いをすると、昂輝もくすりと笑ってくれた。寝心地はわからないが、少なくとも今…安心感は与えられている。
『って…私、車で寝てたのか』
昂輝「はい。俺たちを送って、そのまま車の中で寝てしまったみたいです。…だから、昨夜は俺が一緒にいました」
昨日も仕事で疲れただろうに…。ありがとう、と彼の髪を撫でると、彼は柔らかな笑みを返してくれた。
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作者名:雪藤 | 作成日時:2019年11月1日 19時